コラム

アマゾンがコンビニ進出! Amazon Goは小売店の概念を180度変える

2016年12月20日(火)16時07分

 アマゾンはこのところ世界各地に大規模な流通システムを構築しており、日本もその例外ではない。アマゾンジャパンは全国に9カ所の巨大倉庫を保有しており、最大規模を誇る小田原の物流センターは20万平方メートル(延床面積)の広さがある。米国内の平均的なアマゾン物流センターの面積は11万平方メートルなので、小田原の施設は世界的に見てもかなり大規模なものといってよい。

 このほか、大都市圏を中心に1時間以内で配送を行う「プライムナウ」のシステムも整備しており、一括大量配送ではない、個別対応型の配送システムを着々と作り上げている。

 つまり、アマゾンはすでに世界有数の物流企業となっており、しかも日本だけで4000万人を超えるネット通販利用者を抱えている。こうした巨大企業が、本格的に無人店舗事業に乗り出してきた場合、そのインパクトは大きいはずだ。

無人コンビニと自動運転システムは親和性が高い

 もしかするとアマゾンは数年というタームではなく、もう少し先を見据えているのかもしれない。米グーグルは2020年頃まで完全自動運転車を実用化する方針と言われており、一部では2017年中にも自動運転タクシーのサービスを開始すると報道されている。

 あくまで筆者の想像だが、アマゾンの無人コンビニは、自動運転システムとの連動を念頭に置いたものかもしれない。自動運転システムを備えたタクシーのインフラがあれば、人を乗せていない時間や夜間などは、商品の配送に自動運転車を転用することができる(電気自動車なら夜間の騒音の問題もクリアできる)。

 トラックと異なり、乗用車は一度に運べる荷物の量が少ない。だが、大都市圏にはかなりの台数が配置されることになるため、個別配送にはうってつけの手段となる。また自動運転タクシーの利用者にスマホを通じてオススメ商品を通知し、店舗に誘導する目的にも利用できる。

 AIが導入されているので、その人の行動パターンを十分に把握した上でのオススメである。出張から帰ったばかりとAIが認識すれば、栄養ドリンクはいかがですか?とスマホから通知があり、自動運転タクシーを店舗に向かわせましょうか?といった流れになるかもしれない。便利でよいと考えるか、少々、気味が悪いと考えるかは人それぞれだが、アマゾン・コンビニが目指しているのは、おそらくこうした世界である。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、40空港で運航10%削減へ 政府機関閉鎖で運営

ワールド

米ボーイング、737MAX墜落事故巡り犠牲者3人の

ワールド

台風25号、フィリピン死者114人に 勢力強めベト

ワールド

UPS輸送拠点、6日にも業務再開 12人死亡の墜落
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイロットが撮影した「幻想的な光景」がSNSで話題に
  • 4
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 5
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 6
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 7
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    約500年続く和菓子屋の虎屋がハーバード大でも注目..…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story