コラム

アマゾンがコンビニ進出! Amazon Goは小売店の概念を180度変える

2016年12月20日(火)16時07分

Jason Redmond-REUTERS

<レジが存在せず、商品を手に取ってそのまま店を出れば自動的にネット上で課金されるという「Amazon Go」。AIを駆使した目新しいテクノロジーに注目が集まるが、その真の影響は小売店というビジネスの業態そのものに及ぶ。日本でも展開されれば、コンビニ業界への影響は計り知れない>

 米アマゾンがいよいよコンビニ業界に進出する。今のところ米国内での取り組みだが、AI(人工知能)技術をフル活用し、レジのない完全自動化されたシステムを導入するという。

 ネット通販で得られた膨大な購買履歴とリアル店舗での購買履歴を組み合わせると、従来では考えられなかった水準の顧客情報を獲得できる。リスクの大きい取り組みではあるが、ビジネス構造に大きな変化がなかった小売店という業態に革命的な変化をもたらす可能性が見えてきた。

アマゾンのコンビニにはレジという概念がない

 同社がスタートするコンビニ事業は「Amazon Go」と呼ばれており、2017年初め、米シアトルに第1号店がオープンする。店舗の広さは約160平方メートルほどで、現在、社員らによる試験運用が行われているという。コンビニ大手セブン-イレブンの標準店舗面積は140平方メートル、全店舗を平均した面積は約130平方メートルである。Amazon Goの店舗は日本のコンビニより少し広いくらいの規模ということになる。

 品揃えについては、飲料や総菜を中心としたものになるということなので、日本型のコンビニというよりも、いわゆるグロッサリー・ストア(食料雑貨店)に近い業態と考えた方がよいかもしれない。

 Amazon Goの最大の特徴は会計がすべて自動化されている点である。これはレジが自動化されているという意味ではない。自動レジは米国のスーパーなどではよく見かけるが、これはバーコードを顧客自身がかざすことによって会計作業の一部を自動化するだけであり、レジを通らなければ外に出られないという意味では、従来の店舗とまったく同じである。

 だがAmazon Goは、そもそもレジというものが最初から存在していない。あらかじめスマホに専用アプリをダウンロードしておくと、店内で手に取った商品が自動的にアプリの買い物カゴに入り、そのまま店を出れば、アマゾンのアカウントで課金されるという仕組みである。

 では、店側はどのようにして顧客が商品を手に取ったことを認識するのだろうか。アマゾンは、店内に設置した無数のセンサーとカメラ映像をAI(人工知能)で解析し、顧客の行動について判断すると説明している。一旦商品を手に取っても、商品を元の棚に戻せば、買い物カゴから削除され課金されないという。

【参考記事】今がベストなタイミング、AIは電気と同じような存在になる

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ地上作戦控え空爆強化

ビジネス

英消費者信頼感、4月は2年ぶり高水準回復 家計の楽

ワールド

中国、有人宇宙船打ち上げ 飛行士3人が半年滞在へ

ビジネス

米サステナブルファンド、1─3月は過去最大の資金流
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story