コラム

脅せば脅すほど台湾と韓国で「シンパ」が負ける......中国と北朝鮮が「不合理な恫喝」に走る訳

2024年01月31日(水)11時47分

そもそも「民主主義と何か」を理解できない人々がいる

とはいえ、恫喝が逆効果しか持たないなら、選挙前にあえてこれを自制して融和姿勢を見せることはできないのか。これについても宮本教授は「難しい」と説明する。

北朝鮮や中国にとって韓国や台湾との軍事対立の可能性は常態化しており、相手の選挙に配慮して軍備増強や演習をやめることは難しい。そもそも北朝鮮や中国では外交当局者はともかく、高位の政治家や軍人に韓国や台湾社会が持つ民主主義のメカニズムは感覚的に理解し難い。だからこそ、彼らは一見不合理にみえる「選挙前の恫喝」を当たり前に行ってしまうのだ、と。


そして韓国では今年も、4月の国会議員選挙を前に同じことが繰り返されている。北朝鮮による「いつもの恫喝」を、韓国の保守メディアが大々的に扱い、北朝鮮に対して強硬な保守政権の必要性を強調する。与党の支持率は少しずつ上昇し、選挙はいつの間にか接戦になっている。

中国の「東風」も北朝鮮の「北風」も、北東アジアの緊張を高めるだけなのかもしれない。

プロフィール

木村幹

1966年大阪府生まれ。神戸大学大学院国際協力研究科教授。また、NPO法人汎太平洋フォーラム理事長。専門は比較政治学、朝鮮半島地域研究。最新刊に『韓国愛憎-激変する隣国と私の30年』。他に『歴史認識はどう語られてきたか』、『平成時代の日韓関係』(共著)、『日韓歴史認識問題とは何か』(読売・吉野作造賞)、『韓国における「権威主義的」体制の成立』(サントリー学芸賞)、『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(アジア・太平洋賞)、『高宗・閔妃』など。


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