コラム

今までもらった最高のアドバイスって何?

2024年10月12日(土)16時53分
一切れのチーズ

最後の一切れをたいらげてしまう? 翌日に残す? Fernando Gutierrez-Juarez/picture alliance via Getty Images

<人から受けた小さな助言が意外と毎日の生活を大きく変えることになるかも>

先日、友人と話をしているとき、今までにもらった中で最高のアドバイスって何だった?と聞かれた。

最高のアドバイスは人から教えられたことではなくて、子供の頃に自ら吸収して今は僕の「個性」として定着していると思っているから、本当の意味ではこの質問には答えられないかもしれない。

あるいは、僕にとって最高のアドバイスは、他人が聞いたところでそこから何も「学ぶ」ものはない僕特有のものかも――例えば、16歳の時にリスター先生から、オックスフォード大学に出願するのは上流階級の子供だけだなんて考えるべきじゃない、と言われたこととか。

でも僕は、かなり最近のもので、定期的かつとても意識的に思い出しているアドバイスを1つ思い出せた。僕が元彼女とその家族と数日滞在していたときのこと、僕たちは毎晩そろって食事をしていた。

ある時、僕が持ってきたイタリアのチーズを夕食後にみんなで食べた。最後に少しだけ残ったので、冷蔵庫にしまっていいかと彼女に聞かれた僕は、ほんの1切れだしいま食べちゃうよ、と答えた。これに対して彼女は軽い調子で、明日食べたらまた楽しめるんじゃない?と言った。

週に何度もこの理論を実践

僕は頭の中で彼女の言葉をこんなふうに組み立てた――「いまそれを食べたら単に『処分する』ことになるだけでしょ」「今日さらに1切れ食べる小さな楽しみと、明日味わう楽しみを比べてみて」。

彼女が実際、そんなことを言っていないのは分かっている。彼女が言った数語の中で暗に意味されていただけだ。至って真剣に言うが、それは僕にとって「小さいながらとても頻繁に」人生を変える出来事だった。

週に3回以上、僕はこの論理を適用している。僕はアップルパイを作ったことがあるが、3日でたいらげてしまうのではなく4日目用に少し残している。市場でミニトマトを買って、「最後の数個」を食べ尽くしてしまう代わりに、翌日の料理に添えるために1つか2つ残しておく。

おまけのアップルパイや最後のトマトの味がこんなに楽しめるとは! さすが、ヨーコの知恵のおかげだ。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ナジブ・マレーシア元首相、1MDB汚職事件で全25

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和

ワールド

ロシア高官、和平案巡り米側と接触 協議継続へ=大統

ワールド

前大統領に懲役10年求刑、非常戒厳後の捜査妨害など
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 8
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 8
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story