コラム

コロナ禍で予想外なほどルール遵守のイギリス人に驚き

2020年05月26日(火)18時20分

警察が職務質問したり取り締まったりすることが増えるのかと思ったが、驚くほどルールを破る人がいない Henry Nicolls-REUTERS

<以前からケチくさい軽犯罪やルール違反が目に余る状態になっていたイギリスだから、ロックダウンでも規制に従わない人が続出して警察は大忙しになるのではと予想していたが......>

ロックダウン(封鎖措置)の規制に、イギリス人がかなりしっかりと従っていることには驚かされている。以前に一度、僕が住んでいる街(とイギリス全国共通)でうんざりするほど「しょっちゅう」目にする、ケチくさいルール違反や法律違反について書いたことがある

だから今回のロックダウンが発表されたときは、誰もがあれやこれやと理由をつけて、細かいところで規制を破るだろうと想像していた。「リスクにさらすのはどうせ自分の健康だろう」とか、「友人1人に会うくらい、そんなに危険なわけがない」とか、「ほんのちょっとのズルじゃないか」といった言葉で自分を正当化するだろう、と。ロックダウンが長引くほど、ルール破りはひどくなっていくのでは、と僕は考えていた。

公平を期すために言えば、全ての規制に当然従うとは考えないほうがいい人たちだっている。別々に暮らしている若い恋人たちに、何週間もずっと会うな、ましてや触れるなと言っても難しいだろう。食事や睡眠と同じくらい友達と過ごす時間が重要なティーンエージャーもそうだ。あるいは、特別な記念日を迎える人とか(僕みたいに、1人だけ友人を招いて距離を置いて座ってでもいいから一緒にビールを飲みたい衝動に駆られているに違いない)。

警察官はさぞ忙しくなるだろうと僕は想像した。せっせと公園をパトロールしては少人数のグループを追い払い、通りで人々を呼びとめてはどのくらい外出していたのかを職務質問し、数人で歩いている人には身分証明書を提示させて同じ家に住む家族かどうか確認する――。

イギリスの警察制度の根幹を成す、「同意を得たうえでの取り締まり」(「巡回中のおまわりさん」が銃器を携行していないのもこのためだ)には非常にリスクがある、とさえ指摘するコメンテーターもいた。

当初はパニック買いも起こったが

イギリス人は一般的に、警察のことを、政府の定める法律順守にひたすら尽力する敵対勢力とは考えず、自分たちの面倒を見てくれる「友人」と見なしている。今回、人々が懸念したのは、市民が嫌がる規則を守らせるため、警察が路上で市民を呼び止めたり罰金を科したりし、そのために警察が人々から支持を得られなくなるのでは、ということだった。

だが、多くの人々がロックダウンとはどういうものなのかちゃんと把握していなかった最初の数日を除いて(例えば日課の散歩をするために風景がきれいな場所まで何キロもドライブしてしまうような人もいた)、懸念していたようなことは全く起きなかった。僕の自宅の窓から外を見ると、みんなが必要最低限の外出しかしないために、いつもは満車状態の僕の家の前の駐車場は、空になっている。僕が近所で外出しても、ほとんど誰もいない。人々はすれ違う時、互いにほぼ無意識で2メートルの距離を取って避け合う。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

歴代FRB議長ら、パウエル氏捜査非難 独立性への前

ワールド

メキシコ大統領、米軍事行動の可能性否定 トランプ氏

ビジネス

アルファベット時価総額4兆ドル到達、AI注力を好感

ワールド

ローマ教皇、ノーベル平和賞のマチャド氏と面会 ベネ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救った...実際の写真を公開、「親の直感を信じて」
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    筋力はなぜパワーを必要としないのか?...動きを変え…
  • 7
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 8
    美男美女と話題も「大失敗」との声も...実写版『塔の…
  • 9
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story