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アングル:米中首脳会談は幅広い合意困難か、双方に融和姿勢乏しく

2025年10月24日(金)12時32分

 トランプ米大統領(写真左)と中国の習近平国家主席(写真右)は30日に韓国で首脳会談を行う。2019年6月、大阪で撮影(2025年 ロイター/Kevin Lamarque)

Laurie Chen Michael Martina Karen Freifeld

[北京/ワシントン/ニューヨーク 23日 ロイター] - トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は30日に韓国で首脳会談を行う。ただ両国の関係は、トランプ氏がさまざまな協議は「進展している」と発言した1カ月前から、双方が非難し合って緊張が高まる事態へと一変している。

複数の専門家は、中国の姿勢がより強硬化していることもあり、首脳会談で米中が合意できる分野があるとしても、それはごく限られた範囲にとどまる公算が大きいと予想する。お互いに関税の一部を停止する「休戦」合意の枠組みも危うくなってきた。

復旦大学米国研究センターのウー・シンボ所長は「中国側は、米国による圧力行使を止める上で必要なのは話し合いだけでなく、実効性のある対抗措置だと考えている。最近中国が打ち出した施策は、第2次トランプ政権下での対米交渉の方針が変わったことの反映だ」と指摘した。

数カ月にわたりくすぶっていた貿易戦争が、10月上旬に一気に表面化した。米国が先端技術禁輸対象の中国企業を増やしたことへの対抗として、中国がレアアースの輸出規制を劇的に拡大したためだ。中国が重要鉱物の管理を、自国の国境の外にまで及ぶかたちで強めた今回の動きは、通商紛争に対処するための手段を大幅に拡充したものだ。専門家らは重要なサプライチェーン(供給網)での支配的地位をてこにする意図を鮮明にした、とみる。

コンサルティング会社トリビウム・チャイナのコリー・コムズ氏は「この規制の言い回しは驚くほど明確で、特に複数の半導体チップを狙い撃ちにしている」と述べた。

加工済みレアアースの90%強を生産する中国が参考にしたのは、第三国による中国向け半導体関連製品の輸出を制限することを目指した米国の各種規制だ。

事情に詳しい2人の関係者は、トランプ政権はこうした中国の攻撃を想定外と受け止めたと明かす。もう1人は、政権高官が米企業を回って中国の措置が与える影響を確認しているところだと説明した。

専門家の話では、中国政府はその後規制が特定対象に限られるものだと示そうとしたが、これらの枠組みは長らく準備されたもので、今後も維持されるのがほぼ確実だ。

<双方が強気>

事情に詳しい関係者の1人は、トランプ政権の閣僚は中国のレアアース輸出規制について「全面的な経済戦争」とみなしていると述べた。

この関係者は「(対立が)エスカレーションする見込みで事態は深刻だ。もう一度90日間休戦するといった安易な解決策は存在しない」と懸念する。

打開が難しい理由として在中国米商工会議所代表のマイケル・ハート氏は、双方が自分たちに強みがあると考えている点を挙げた。

ハート氏は「中国政府高官との議論では、彼らは自国経済に自信を持ち、米国の政治経済システムは混乱しているとみており、中国が交渉において強い立場にあると感じている」と話した上で、米国側も自国経済に自信があり、中国経済は弱いと信じているので、協議が困難になっていると解説した。

<揺れる対中政策>

事情に詳しい関係者によると、トランプ政権の中国政策に整合性がないことも問題を複雑にしている。例えば懲罰的な措置を導入しながら、同時に一部の半導体輸出規制を緩和し、中国系動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の米国事業売却問題では合意に至ったという経緯がある。

ハート氏は「首都ワシントンで出会った人々は、トランプ政権の対中政策はかなりタカ派的だという。しかし彼らは、トランプ氏が柔軟で現実的になる場合もあると認めた」と語った。

相互不信が広がる中で、楽観的なシナリオならば2020年に第1次トランプ政権と中国が合意した「第1段階の貿易合意」の続きが実現するだろうが、中国が米国産の大豆やその他農産物を購入する取引の方がより合意がしやすい可能性がある、と関係者の1人はみている。

バイデン前政権高官のピーター・ハレル氏は「最善のシナリオは、相互信頼を醸成し、来年前半に打ち出すことが可能な取引に向けた協議を進める動きが強まることだ」と言及した。

ロイター
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