インタビュー:高市外交、隣国との関係構築が関門 トランプ時代に自立性必要=田中均・元外務審議官
元外務審議官の田中均・国際戦略研究所特別顧問(写真)はロイターとのインタビューで、高市早苗首相の外交政策は近隣諸国との関係構築が関門になるとの見方を示した。2023年1月、東京で撮影(2025年 時事通信)
Yukiko Toyoda
[東京 24日 ロイター] - 元外務審議官の田中均・国際戦略研究所特別顧問はロイターとのインタビューで、高市早苗首相の外交政策は近隣諸国との関係構築が関門になるとの見方を示した。中国にパイプがあった公明党の代わりに日本維新の会と連立政権を組んだことで、日本のアジア外交に不透明感が強まっているとした。トランプ米政権が自国第一主義を追求する中、日本は防衛力の強化だけでなく、中国への関与政策などを通じて自立性ある外交の確立が重要になるとした。
田中氏は外務省入省後、北米審議官として米軍普天間飛行場の返還交渉に関与、小泉純一郎政権時にアジア大洋州局長として2002年の日朝首脳会談を実現させた。
―公明党の離脱を受け、高市自民党は維新の会との連立政権を樹立した。政策への影響は。
かつては派閥間の競争の中で政策が調整された結果、自民党は中道保守に収れんしてきたが、今の自民党執行部を見ると相当右派と言える。公明党は自民党が右に流れていくのを押しとどめていた部分があった。連立相手が同様に右派である維新に変わることでどう政策のバランスを取るのか不安がある。
―トランプ米大統領が来日する。高市政権はどう対峙すべきか。
トランプ氏は民主主義といった基本的な価値観や同盟国との連携よりも、全ては利益に基づく取引という枠組みで処理されるため、予見できない。短期的にはトランプ氏に従っても、いずれは自分たちの足で立つことが必要になる。欧州が防衛強化に向かっているのは、自己防衛という側面がある。世界はトランプ氏の米国に適応しようとしている。
日本もそうした状況を念頭に置き、中長期的に米国から自立していく策を練る必要があるのに、衆参両院で過半数に満たない連立政権が安定性を欠くのは懸念材料だ。
―アジア太平洋経済協力会議(APEC)などを控え、米国の東アジア外交で注目すべき点は。
今秋以降、外交の焦点は欧州、中東から東アジアに移るのではないか。トランプ氏にとって中国の習近平国家主席との会談で大きな通商合意をまとめることが最大の目的だろう。台湾をめぐりトランプ氏が中国と取引するとは思わないが、米国が台湾に関与するという基本方針に影響が生ずれば日本にとっても深刻だ。
北朝鮮に関しても、トランプ氏が金正恩総書記と会談するとの憶測が流れている。トランプ氏が北朝鮮を核保有国として認めることがあれば、地域の安全保障環境は緊張する。ICBM(大陸間弾道ミサイル)だけ制限すればいいとトランプ氏は言ったことがあるが、そうなれば同盟関係は困難に直面する。だからこそ日本は、米国への依存だけを前提にすべきではない。
―高市首相のアジア外交にも注目が集まっている。
近隣諸国との関係をどう構築するのか、アジアで行われる一連の会議は高市政権の外交にとって関門となる。米国が極端な行動を取り、同盟国を守るのか不信感が強まっているときに、地域内の国家は日本と連携を強化したいと考えている。しかし、周辺諸国からみれば、中国にパイプがあった公明党が連立から外れ、維新と連立を組んだことで高市政権のアジア外交に不透明感が強まっているのではないか。
日本はこの地域の安全に資する外交をする必要がある。てことしての防衛力強化は必要だが、フィリピンやオーストラリアなどとの安保協力に加え、日本独自の外交力で信頼醸成に注力すべきだ。さらには中国への関与政策が必要になる。関与の手段として中国をTPP(環太平洋経済連携協定)に加入させることも検討すべきだ。
―日本外交に必要な自立性とは何か。
自力で立つということは、米国との軍事的な一体化だけではない。中国は、日本を米国の追随者と見れば、対日政策を取る必要もないと考えるだろう。米国から当然視される日本は、中国との関係において役に立たない。
トランプ政権下で(米国の)政治体制は中国に近づき、グローバル課題での協力もなくなった。日本には経済分野のルール作りやグローバルな課題において協力する道は残っている。日中韓のマーケットを統合すれば、米国よりも大きくなる。これは米国との関係を壊すことではない。日米安保体制を抑止力として強化することと両立する範囲で中国を引き込める。それが結果として安保環境を改善することにつながる。
日本が国力をもって、自身の立ち位置を定める必要がある。小泉純一郎元首相の口癖だが、米国との関係を強化することでアジアの問題を解決できるし、アジアとの関係を強化することで米国にものが言える。こうした戦略性が重要だ。
(聞き手:豊田祐基子 編集:久保信博)
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