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EU首脳、ウクライナ財政支援で合意 ロシア資産の活用は明記せず

2025年10月24日(金)09時00分

 10月23日、欧州連合(EU)首脳会議は、今後2年間、ウクライナの緊急資金需要に対応することで合意した。ブリュッセルで7月16日撮影(2025年 ロイター/Yves Herman)

[ブリュッセル 23日 ロイター] - 欧州連合(EU)首脳会議は23日、今後2年間、ウクライナの緊急資金需要に対応することで合意した。ただ、ロシアの凍結資産を活用してウクライナに融資を行う案については、ベルギーが懸念を示したため、明確な支持の表明を見送った。

ロシアに友好的なハンガリーを除く全てのEU加盟国首脳が合意した文書は「欧州理事会は、軍事・防衛の取り組みを含め、ウクライナの2026─27年の緊急資金需要に対応することを約束する」と明記。欧州委員会に対し「ウクライナの資金需要評価に基づく財政支援の選択肢」をできる限り速やかに提示するよう求めた。

一方、「ロシアの資産は、ロシアが侵略を停止し、戦争の損害を補償するまで、引き続き凍結すべきだ」としながらも、この資産を利用して約1400億ユーロ(1630億ドル)の「賠償融資」を行う案については、明確な支持を示さなかった。

ベルギーのデウェーフェル首相は、同国が証券保管機関ユーロクリアを通じて凍結資産を保有していることを踏まえ、ベルギーだけがリスクを負わないよう、3つの条件を提示。

「要求が満たされれば、前進できる。満たされなければ、私はこの決定を阻止するために、欧州レベルでも、国内レベルでも、政治的・法的にあらゆる手を尽くすつもりだ」と述べた。

同首相は(1)ロシアが起こす可能性のある訴訟の費用を全てのEU加盟国が分担する(2)資金の返済が必要になった場合、全てのEU加盟国が財政的に貢献する(3)他国が保有するロシアの凍結資産をこの枠組みに含める――ことを求めた。

同首相は「リスクについて透明性が必要だ。この決定の法的根拠について透明性が必要だ」と発言。「賠償融資」構想の合法性はいまだ明確ではなく、最大の問題は、万一の際に返済を保証できるかどうかだと指摘した。

ロシアはこの構想を違法な財産の差し押さえだと主張し、報復を警告している。

会議後、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は「これは決して単純な問題ではない。非常に複雑だ」とし「まだ明確化すべき点があることは明白だ」と語った。

首脳会議にはウクライナのゼレンスキー大統領もゲストとして出席。「凍結されたロシア資産の全面活用を遅らせる国は、ウクライナの防衛を制限しているだけでなく、EU自身の進展も妨げている」とし、資金の多くを欧州製の兵器購入に充てる考えを示していた。

コスタ欧州理事会議長(大統領)は会見で「技術的な課題は全て解決可能であり、この解決策は実現しうる」と述べた。

ロイター
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