ニュース速報

ワールド

メイ英首相、EU単一市場からの脱退表明 ハードブレグジットへ

2017年01月18日(水)07時55分

 1月17日、英国のメイ首相は17日、欧州連合(EU)離脱の交渉方針に関する演説を行い、EU離脱に伴いEUの単一市場を脱退する方針を明らかにした。写真はロンドンで演説を行う同首相。代表撮影(2017年 ロイター)

[ロンドン 17日 ロイター] - 英国のメイ首相は17日、欧州連合(EU)離脱の交渉方針に関する演説を行い、EU離脱に伴い単一市場からも脱退する方針を明らかにした。

単一市場残留に向け妥協案を探るのではとの憶測を否定、ハードブレグジット(強硬離脱)を目標に掲げた。欧州市場への最大限のアクセス確保を目指すとともに、欧州以外の国々と独自の自由貿易協定(FTA)を締結していく構えで、大陸からの移民流入を制限する姿勢も打ち出した。

首相はEUとの対等な関係を探っていくと協調。「私が提案していることは、EU単一市場に留まることを意味しない」とした上で、「包括的で大胆、かつ野心的なEUとの自由貿易協定を通じて、EUへの可能な限りのアクセスを目指す」と表明した。一定分野で現在の単一市場の取り決めが維持される可能性にも言及したほか、最終的な離脱案について、議会での承認を求める考えも示した。

メイ首相が議会の承認を求める考えを示したこともあり、ポンドは急騰。対ドルで2.9%値上がりし1日としては1998年以降で最大の上げを記録した。

首相は演説のなかで、ノルウェーなどEUとFTAを結ぶ国々が利用している既存の枠組みを導入するつもりはないと言明、ソフトブレグジット(穏健離脱)を明確に否定した。

離脱交渉については、移民流入の制限、欧州司法裁判所(ECJ)の管轄からの離脱、EU関税同盟の正式加盟停止など12の優先事項を提示した。関税同盟への加盟は英国独自の貿易協定締結の妨げとなっているとしたほか、欧州とはなるべく摩擦のない形で貿易を維持したいとの考えを明らかにした。

英国は3月末までに2年間の正式な離脱交渉を開始する見込み。メイ首相は、今後2年間で離脱条件に関して合意し、新規則は必要に応じて段階的に導入したいとした。

さらに「EUとの関係が今後変化するに伴い、ビジネスが危機に陥ったり、安定性が脅かされることは誰の得にもならない。われわれは破壊的な危機の回避を求めており、英国とEUが新たな関係に移行する上で必要となる新たな取り決めを結ぶために全力を尽くす」と述べた。

メイ首相はEU解体を望まない考えも表明。「EUの成功はなお、圧倒的に英国の国益に最もかなう」と語った。

一方で、EUが懲罰的関税を主張すれば、企業をつなぎとめるため、税制面での優遇策を活用する可能性も示唆した。

ハモンド財務相は議会で、EUとの包括的な貿易合意が期待できない場合、強硬な姿勢をとる可能性を示した。

スコットランドのスタージョン行政府首相はメイ氏の演説後、「われわれの経済や雇用、生活水準への影響に関係なく、スコットランドが将来の選択ができない状態で、英国政府がEUや単一市場から離脱することは容認できない」と述べた。   

英自動車工業会(SMMT)は関税同盟参加の重要性を強調、ドイツ高級車メーカーBMWは単一市場への無関税でのアクセス確保を求めた。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2017 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送イスラエルがハマス幹部狙い攻撃、ガザ交渉団高官

ワールド

再送-米NY渋滞税、効果発揮か 中心部への乗り入れ

ワールド

仏ワイン生産、25年は平均下回る見込み 熱波や干ば

ビジネス

24年の米貧困率12.9%、ほぼ横ばい 3590万
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒否した母親、医師の予想を超えた出産を語る
  • 3
    富裕層のトランプ離れが加速──関税政策で支持率が最低に
  • 4
    もはやアメリカは「内戦」状態...トランプ政権とデモ…
  • 5
    ドイツAfD候補者6人が急死...州選挙直前の相次ぐ死に…
  • 6
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にす…
  • 7
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 8
    「ディズニー映画そのまま...」まさかの動物の友情を…
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 4
    眠らないと脳にゴミがたまる...「脳を守る」3つの習…
  • 5
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...…
  • 6
    「あのホラー映画が現実に...」カヤック中の男性に接…
  • 7
    「生きられない」と生後数日で手放された2本脚のダ…
  • 8
    「稼げる」はずの豪ワーホリで搾取される日本人..給…
  • 9
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 10
    エコー写真を見て「医師は困惑していた」...中絶を拒…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 6
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 10
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中