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焦点:大手生保、下期の円債投資は入れ替え中心 超長期債の需要限定的

2025年10月29日(水)15時24分

 10月29日、国内の大手生命保険会社は2025年度下期、一般勘定資産の運用の軸となる円債について、過去に購入した低利回り債券を売って利回りの高い債券に入れ替える取り組みに注力する。写真は円紙幣と日本の国旗のイメージ。2022年6月撮影(2025年 ロイター/Florence Lo)

Tomo Uetake

[東京 29日 ロイター] - 国内の大手生命保険会社は2025年度下期、一般勘定資産の運用の軸となる円債について、過去に購入した低利回り債券を売って利回りの高い債券に入れ替える取り組みに注力する。残高を積極的に積み増す動きは限定的で、主要投資家の買いで超長期国債相場の地合いが好転する展開は期待薄となりそうだ。

ロイターが国内生保10社に実施した聴き取りによると、日本生命や第一生命などの大手を中心に、下期の円債投資は低利回り債券の入れ替えが中心で、残高は減少か横ばいとする計画が多い。

上期には超長期の円金利が過去最高水準に急上昇(債券価格は下落)する局面があったが、生保各社にとって入れ替えは、減損リスクの低減やポートフォリオの「質」を改善する効果がある。

一方、日経平均株価が初めて5万円の大台に乗せるなど、史上高値圏にある国内株式については、国内債券の入れ替えと並行して残高圧縮を計画する生保が多い。

日本生命の国内株式の含み益は9月末時点で9.5兆円(速報値)と潤沢だ。「足元の株価はかなり高く、割高な銘柄は売却や入れ替えを行っている。そこで売却益が出るので、収支の観点でも(売却損が出る)国内債券の入れ替えがしやすい環境だ」(都築彰・執行役員財務企画部長)という。また第一生命も「下期の円債入れ替えに株式の売却益を一部活用することを検討している」(市村直人運用企画部長)という。

ただ、国内株式の含み益の状況は各社で異なる。株式の含み益で債券の含み損を相殺できる会社ばかりではなく、低利回り債の入れ替えに対し、スタンスの違いがみられる。

生命保険契約という長期の円建て負債を抱える生保が主な投資対象とする30年国債の利回りについては、年度末は足元の3.1%からほぼ横ばいでの着地を見込む会社が多いが、その大半が年度内に3.5%程度への上昇があり得ると予想。

足元の超長期国債の魅力度については「高市政権の財政政策や米国のインフレを巡る不確実性があり、まだ見守っている」(明治安田生命)、「負債コストは十分補える水準だが、買い急ぐスタンスではない」(第一生命)など、投資にはやや慎重な声が複数聞かれる。

このため、主力投資家である生保の買いによって下期に超長期ゾーンの需給が改善し、相場の地合いが好転する展開はなかなか見込みづらい状況だ。

しかし、中堅生保の計画に目を向けると様相は異なる。富国生命では上期の想定を超える超長期金利上昇を受けて今年度の円債残高の増加幅を拡大し、下期に2300億円積み増す方針。また大同生命も、下期に国内債券の残高を1500億円程度増やす計画だ。

日銀の金融政策については、今年度は12月か1月の政策決定会合で追加利上げがあるとの見方がコンセンサスで、ターミナルレート(到達点)は1.0─1.5%の間で予想が割れている。

(植竹知子 取材協力:金融マーケットチーム、編集:石田仁志)

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