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インタビュー:日銀1月までに利上げ、高市政権でも容認=クレディ・アグリコル証 会田氏

2025年10月08日(水)21時31分

クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは8日、ロイターとのインタビューで、自民党の高市早苗総裁による政権が誕生した場合でも、日銀は来年1月までに利上げする可能性があるとの見方を示した。写真はに日銀本店。1月23日、東京で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

Kentaro Sugiyama Makiko Yamazaki

[東京 8日 ロイター] - クレディ・アグリコル証券の会田卓司チーフエコノミストは8日、ロイターとのインタビューで、自民党の高市早苗総裁による政権が誕生した場合でも、日銀は来年1月までに利上げする可能性があるとの見方を示した。日銀は政策金利0.75%までなら「十分緩和的」と高市政権に説明して引き上げ、その後は「高圧経済」の実現を目指す政権から足並みを揃えることを求められ、1年間は政策金利を維持すると予想した。

会田氏は、党総裁選で高市氏の推薦人となった議員らが参加する「責任ある積極財政を推進する議員連盟」のアドバイザーを務め、高市氏の経済政策にも影響を与えているとされる。高市氏は4日の総裁就任会見で財政、金融両政策とも政府が責任を持つと表明した。

会田氏は高市政権が誕生した場合の日銀の金融政策について、「来年1月までに利上げを実施することは容認される」と予想。日銀は利上げを継続するこれまでの姿勢を急に転換できないため、政権には政策金利を0.75%に引き上げてもまだ十分緩和的だと説明して利上げに踏み切るとみる。その後はインフレ率が次第に鈍化する中で利上げを急ぐ状況ではなくなり、金融・財政両面から高い需要を作り出そうとする政権の下、次の利上げは2027年まで待つとの見通しを示した。

高市政権の財政政策については、臨時国会で議論する補正予算が大規模になると予想した。2年連続で15兆円弱の補正予算を組んだことを踏まえ、「それを下回るわけにはいかないだろう」と語った。

会田氏は「グローバルな潮流は、政府の役割を縮小する新自由主義から官民連携の投資・需要の拡大を目指す新機軸へ転換している」と指摘。高市政権も「高圧経済」に向けた政策で企業を貯蓄超過から投資超過の成長モードに戻し、構造的デフレ圧力を完全に払拭しようとしていると述べた。

<良い円安>

外為市場では高市総裁就任以降、財政が悪化するとともに日銀が利上げをしづらくなるとの見方から円安が進行。ドル/円は8日、8カ月ぶりに一時153円台に乗せた。

会田氏は、財政懸念による円売りではなく、高成長を見込んだ日本株への投資の為替リスクをヘッジするための海外勢の円売りの影響だと指摘。むしろ輸出採算が改善し、トランプ米政権の関税で増えるコスト負担も軽減できる「良い円安」だとの見方を示した。

円安で輸入価格が上昇し、家計が圧迫される懸念はあるものの、積極財政によって軽減することができると説明。「高市政権は円高に戻すために日銀に利上げをお願いすることはないだろう」と語った。

政府は長らく基礎的財政収支(プライマリー・バランス=PB)の黒字化を財政健全化の目標として位置付けてきた。高市氏は4日の会見で財政政策の基本方針を問われ、「財政の健全化が必要ではないと言ったことは一度もない。純債務残高対GDP比を引き下げていくことには心を砕きたい」と語った。

会田氏によると、高市氏は純債務残高対GDP比を日銀の資金循環統計をベースに算出しているという。2026年の「骨太の方針」でPB黒字化目標に代わる新たな財政規律の導入を議論する可能性があるとの見通しを示した。

(杉山健太郎、山崎牧子 編集:久保信博)

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