マクロスコープ:日本株は急騰後の調整局面へ、年末4万2000円 専門家が予想

8月20日、日経平均株価の2025年末の着地点は4万2000円ーーロイターがアジア・オセアニア(含む日本)の市場関係者18人を対象に実施した調査では、史上最高値を更新し続けてきた同株価は冬にかけて急騰後の調整局面を迎えるとの予想が示された。2024年12月、東京証券取引所で撮影(2025年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Rocky Swift Mayu Sakoda
[東京 20日 ロイター] - 日経平均株価の2025年末の着地点は4万2000円ーーロイターがアジア・オセアニア(含む日本)の市場関係者18人を対象に実施した調査では、史上最高値を更新し続けてきた同株価は冬にかけて急騰後の調整局面を迎えるとの予想が示された。
一方で、来年まで見通すと、予測中央値は26年上期末で4万3000円、26年末には4万5500円と、持ち直しから反転に転じるとみられている。
調査は株価が上昇の勢いを強めていた8月8─18日に実施した。
<日米関税合意、履行に不安>
株価が高値圏にある中、年末までの期間では、多くの市場関係者は日米関税合意の行方に関心を寄せている。
日米政府は7月22日(米国時間)、「相互関税」を15%、自動車関税も15%とすることで合意した。日本株は急騰したが、引き下げ時期やその他の合意の詳細については曖昧なままだ。
楽天証券経済研究所の窪田真之チーフ・ストラテジストは「中国に課されている関税率と比較すると低いため、相対的に日本企業は優位になる」と話す。ただ、「合意が実行される前提で予想しているが、トランプ米大統領が本当に守るかどうか、わからなくなってきた」と不安を募らせる。
日経平均は4月、トランプ大統領が主要貿易相手国に対して相互関税を課すと発表、世界同時株安の中で急落した。その後、トランプ氏が関税交渉の期限を延長し、各国が米国と合意したことで、株価は回復してきた。
日本経済は輸出に支えられており、特に自動車産業は対米輸出依存度が高く、日本株は輸出や為替の動向に大きく左右される。先週発表された4─6月期の実質国内総生産(GDP)では、トランプ関税に対して輸出が持ちこたえたため、市場予想を上回る成長が示された。
<コーポレート・ガバナンスの改善>
近年の日本株の上昇の背景には、東京証券取引所が進める継続的なコーポレート・ガバナンス(企業統治)の改善がある。多くの企業が大量の自社株買いを行い、非公開化も急増する中、海外投資家の資金が流入した。
日経平均は24年2月、バブル経済ピークの1989年に記録した史上最高値を更新した。同7月11日に取引時間中ベースの最高値(4万2426円77銭)を更新した後は、2度大きな調整を経験した。
日本株は、日米関税交渉を巡る不透明感から、最近まで世界の主要な株式市場と比べ出遅れていた。過度な警戒感が後退し、マクロ統計でプラス成長が示される中、今回の調査では12人のアナリストのうち9人が、日本企業の業績は25年後半に改善すると予想している。
大和証券の坪井裕豪・日米株チーフストラテジストは「米国経済が堅調であれば、日本企業は関税コストを価格に転嫁しやすくなり、業績の支えとなる」とみている。
米オアンダのシンガポール駐在シニアマーケットアナリスト、ケルビン・ウォン氏は「賃上げによる内需の下支えと米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和により、日本は海外投資家にとって引き続き魅力的な投資先となる」と話す。
ウォン氏は26年末までに日経平均が4万6800円まで上昇すると予想しており、回答の中で最も強気な予測となった。「ドル安とFRBのハト派転換による世界的な流動性の拡大は、日本株に好循環を生み出す可能性が高い」という。
投資家が注目している国内のテーマは、日本銀行による利上げと政治的混乱だ。
日銀の植田和男総裁は、米国の関税政策を巡る不確実性を理由に、金融引き締めを控えている。一方、石破茂首相は、参議院選挙での自民・公明の連立与党敗北を受けて、退陣圧力に直面している。
IGのオーストラリア駐在の市場アナリスト、トニー・シカモア氏は、石破首相の後任がより財政拡張的になるとの期待が日本株の追い風となっていると分析。「日経平均は年末まで上昇基調を維持し、その後、日銀の利上げ実施が近づくにつれて調整が見られると予想している」という。
(Rocky Swift、佐古田麻優 編集:橋本浩)