日銀総裁会見のポイント:関税合意の評価と見通し実現の確度、利上げの地ならしあるか

31日午後3時半から予定されている日銀の植田和男総裁の記者会見では、日米関税合意をはじめ最近の米関税を巡る状況を踏まえ、今後の政策見通しをどのように示すかが最大の注目点となる。写真は日銀本店。都内で2023年9月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)
Hitoshi Ishida
[東京 31日 ロイター] - 31日午後3時半から予定されている日銀の植田和男総裁の記者会見では、日米関税合意をはじめ最近の米関税を巡る状況を踏まえ、今後の政策見通しをどのように示すかが最大の注目点となる。今回は政策金利を据え置いたが、今後の利上げに向けた道筋についてどのように説明するか。利上げのタイミングやその条件となる経済・物価見通しについてどのような認識が示されるかがポイントとなる。
1.日米関税合意の評価
日米関税合意は日本経済の不確実性を低下させることになるが、日本だけでなく各国・地域との関税交渉の進展について総裁は現時点でどのように評価しているか。当初の想定に比べ、世界経済の不確実性の判断をどのように見直し、日本の物価・経済見通しをどう修正するか。政策判断のポイントとなる国内企業の設備投資や賃上げへの影響についてどういった見方を示すか。
2.利上げのタイミング
総裁は前回の決定会合後の会見で「現在はどこのタイミングで利上げをするのかという話のまだ手前にある」との見方を示した。その後、米国と各国・地域との関税合意で不確実性がより低下する中で、データが出始めることになる年後半にかけて、利上げを検討するタイミングや道筋についてどのような言及があるか。引き続き利上げの話の「まだ手前」なのかどうか。データが想定を上回ってきた場合に、年内利上げの可能性は十分意識されるのか。利上げに向けた総裁の発言が引き続き慎重なトーンに終始するか、慎重ながらも今後の利上げに向けて地ならしをするようなトーンに変化するか、チェックしたい。
3.基調的物価の見通し
今回の展望リポートで25年度の物価見通しを上方修正したが、基調的な物価上昇率がいったん伸び悩んだ後、徐々に高まっていくというシナリオや展望リポートの見通し期間後半に物価安定目標と整合的な水準で推移するという見通しは維持した。総裁がこのシナリオや見通し実現の確度の高まりについて、一歩踏み込んだ発言をするかどうか、チェックしたい。関連で、コストプッシュによる物価上昇が基調的な物価上昇率に2次的な影響を与える可能性について、どう捉えているかも確認したい。
経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい、としていた5月の展望リポートから、今回は物価の見通しについて、概ね上下にバランスしていると変更した。これを受けて、今後の利上げパスに関して、何らかの示唆があるかどうか。
4.参院選後の財政拡張圧力
7月の参院選の結果、与党が過半数割れとなり、物価高対策などを巡り財政拡張的な政策の実現性が高まっている。このことが将来のインフレ圧力を高め、結果として日銀の政策がビハインド・ザ・カーブに陥るリスクはないのか。米国経済が足元堅調に推移するなかで円安が進行する場合、政策判断にどのような影響を与えるか。