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中国GDP、24年は5%増で政府目標達成 実感との乖離訴える声も

2025年01月17日(金)19時41分

 1月17日、中国国家統計局が発表した2024年第4・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比5.4%増加した。写真は北京で昨年2月撮影(2025 ロイター/Florence Lo)

[北京 17日 ロイター] - 中国国家統計局が17日発表した2024年第4・四半期の国内総生産(GDP)は前年同期比5.4%増加した。ロイターがまとめた予想の5.0%増を大幅に上回り、23年第2・四半期以来の高水準だった。

第3・四半期は4.6%増だった。

24年通年の成長率は5.0%となり、政府が目標に掲げていた5%前後を達成した。アナリストは4.9%の成長率を予想していた。

ただ、多くの人々は生活水準が悪化しているとして、実感との隔たりを口にしている。

第4・四半期GDPは前期比では1.6%増。予想は1.6%増だった。

<12月は消費の伸びが生産に見劣り>

中国政府が矢継ぎ早に打ち出した景気刺激策が成長を後押しした。ただ、米国との新たな貿易戦争の脅威と弱い内需が、今年の逆風になりそうだ

同時に発表された昨年12月の各種経済指標も、政府の支援策に支えられ、新年に向けて景気が持ち直したことを示唆する内容となった。

鉱工業生産は前年同月比6.2%増となり、11月実績および市場予想の5.4%増を上回った。4月以来の高い伸び率だった。

小売売上高は3.7%増加し、11月の3.0%増から加速した。1月の旧正月に向けて、消費を増やしたことが背景にあるとみられる。

一方、全国の調査ベースの失業率は、11月の5.0%から12月は5.1%に上昇した。旧正月を控えて企業が人員増に慎重になったほか、米国との貿易摩擦を巡る懸念も採用意欲の重しになったもようだ。

また、24年の不動産投資は前年比10.6%減少した。1─11月は10.4%減だった。

不動産販売(床面積ベース)は前年比12.9%減、1─11月は14.3%減だった。

<米国向け輸出前倒しの可能性>

香港に駐在するHSBCのアジア担当チーフエコノミスト、フレデリック・ノイマン氏は「中国経済は工業生産と輸出にけん引され、復活の兆しを見せている」としつつ、第4・四半期のGDPが好調だったのは米国向け輸出の前倒しによるものだった可能性があると分析した。

その上で「25年は米国の輸入制限を受けて輸出が下押し圧力にさらされるため、景気刺激策を講じる必要性がさらに高まるだろう」と述べた。

保銀投資(ピンポイント・アセット・マネジメント)のチーフエコノミスト、張智威氏は「昨年9月の政策スタンスの転換が、第4・四半期の景気を安定させたようだが、景気の勢いを高め、回復を持続させるには、大規模かつ継続的な政策刺激が必要となる。失業率の上昇を抑えるためには、財政政策がより積極的な姿勢をとる必要がある」と語った。

中国株と香港株は小幅高となったものの、人民元は中国国債の利回り低下と関税の脅威による下押し圧力を受け、16カ月ぶりの安値近辺で推移した。

市場の限定的な反応は中国の先行きに対する自信が揺らいでいることを反映している、とアナリストは指摘する。

<公式統計への疑念再燃>

公式統計の正確性に対する長年の疑念もこの1カ月で強まっている。

中国の著名なエコノミストである高善文氏は、21年から23年にかけてGDP成長率が10%ポイント過大評価された可能性があると指摘した。同氏のコメントはソーシャルメディア上で拡散したものの、その後見られなくなった。

中国は過去に成長目標を下回ったことがほとんどない。パンデミック(コロナ大流行)に伴う22年が最後だ。

ロジウム・グループは12月31日付のノートで、24年の中国経済成長率は2.4─2.8%にとどまったと推計している。

ロジウムのパートナー、ローカル・ライト氏は「中国経済が実際に5%の成長を遂げていれば、過剰生産能力はそれほど差し迫った問題になっていないはずだ」と語った。

米コーネル大学教授(貿易政策)で、国際通貨基金(IMF)の元中国担当ディレクターであるエスワール・プラサド氏は「さえない内需、持続的なデフレ圧力、低迷する不動産・株式市場に直面し続ける中、中国経済の成長率が24年の目標とぴったり一致したことは疑わしく思える」と述べた。

ロイターは公式統計への疑念が出ていることについて中国政府のメディア対応部門にコメントを求めたが、今のところ返答を得られていない。

野村のアナリストらは「中国当局は良好な経済指標に満足している場合ではない」とし、「真に持続可能な」成長回復を実現するためには、財政・金融政策を緩和し、不動産危機を解決し、税制・社会福祉制度を改革し、地政学的緊張を緩和する必要があると提起した。

北京に住むインベストメントバンカー、ジアチー・ジャンさん(25)は、24年は不景気のように感じられたと振り返った。

給与は2年連続でカットされ、服の購入や外食を控えているという。同僚8─9人が仕事を失い、「社内には不安感が漂っている」と述べた。「いつでも辞める準備はできているが、今は転職先がない」と語った。

ロイター
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