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適切なイールドカーブ、経済・物価・金融情勢で「当然、変化」=黒田日銀総裁
12月7日、日銀の黒田東彦総裁(写真)は都内で講演し、昨年9月から続けている短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度とする「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)」の運営方針について説明。「写真は都内で4月撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 7日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は7日都内で講演と質疑を行い、現行の政策枠組みのもとで目指している適切なイールドカーブの判断は、経済・物価・金融情勢という3つの基準それぞれの展開によって「当然、変化していく」とし、変化に応じたイールドカーブを考えていくことになると語った。
日銀は昨年9月から短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に誘導するイールドカーブ・コントロール政策を続けている。
黒田総裁は、適切なイールドカーブの形状を探し出すことは「実務的に難しい分析を伴う」としたが、適切かどうかを判断する上では「経済・物価・金融情勢」という3つの基準を「かなりはっきり示している」と指摘。
この3つの基準について、それぞれが「当然、今後どのように展開していくかによって具体的な判断は変化していく」とし、変化に応じて短期金利・長期金利の「操作目標を考えていくことになる」との見解を示した。
もっとも、現在のイールドカーブは、これらの基準に照らしても「貸出・社債金利に適切に波及し、経済も改善しており、金融機能にも悪影響が生じていることはない」と述べ、「適切なものだ」と強調した。
黒田総裁が11月のスイスでの講演で言及した、金利を下げ過ぎると金融仲介機能に悪影響を与え、かえって金融緩和効果が減衰するとしたリバーサル・レートの議論については「参考になる」としたものの、「現時点では学会における学術的な分析にとどまっている」と述べるにとどめた。
もともと日銀では、YCC導入によって金融仲介機能への影響も考慮した政策運営を行っており、総裁は経済・物価情勢の点検を含めて「こうした姿勢は一貫している。今後も変わることはない」と語った。
一方、長期化する超低金利環境に加え、全国的な人口や企業数の減少という構造問題を背景とした金融機関間の競争激化によって、地域金融機関を中心に本業の収益力の低下が続いている。
総裁は、こうした地域金融機関の問題を「極めて注目している」と発言。低金利の長期化による金融仲介機能の停滞リスクには「注意が必要」と語ったが、現時点で金融仲介機能が阻害されていることはないとし、金融システムの安定維持のために日銀として「できることは何でもやる」と強調した。
また総裁は、日銀による巨額の国債買い入れについて、早晩市場に流通する国債が底を付くと懸念されているが、「これまでのところ国債の買い入れは円滑に行われており、当面、買い入れの継続に支障が生じるリスクは小さい」と反論した。
*内容を追加しました。
(伊藤純夫 竹本能文)