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キヤノン株が映す不安、高利回り銘柄にも円高リスク

7月6日、止まらない円高が日本株に対する悲観的な見方を強めている。象徴的なのがキヤノン株の動きだ。キヤノンのショールームで2013年10月撮影(2016年 ロイター/Yuya Shino/File Photo)
[東京 6日 ロイター] - 止まらない円高が日本株に対する悲観的な見方を強めている。象徴的なのがキヤノン<7751.T>株の動きだ。円高で業績が悪化し、減配リスクが高まるとの見方が出ており、国債金利が急低下するなかでも、高い配当利回りに注目した買いは鈍い。
先行き不透明感が一段と濃くなっており、日本株全体も上値がずしりと重くなっている。
<キヤノン株の変化>
日本国債の利回りが20年までマイナス圏に沈むなか、キヤノン株の5%台の配当利回りは魅力的に映る。しかし、6日の終値は1.98%安と日経平均<.N225>の1.85%を上回る下落となった。
同社の16年12月期通期の連結営業利益は前年比15.5%減の3000億円の見通し。しかし、4月以降の想定為替レートは1ドル=110円、1ユーロ=125円。足元のレートは、それぞれ100円、111円と大きくかい離しており、さらなる業績の下振れ懸念がぬぐえない。
同社は今期の配当予想は未定としているが、1988年から一度も年間配当を減額したことのない、株主還元の代表格ともいえる企業だ。「キャッシュ創出力は強く、減配は見込みにくい」(中堅証券の電機業界アナリスト)との見方も多い。
しかし止まらない円高に、市場では「利益の伸びがなければ減配のリスクは付きまとう。この局面で、同社の利回りに注目して買うのは難しい」(国内証券ストラテジスト)との見方も出てきた。株主還元姿勢に対する投資家の信頼感も、急速な株安/円高で揺らぎつつあるようだ。
<メガバンク株にも懸念>
予想配当利回りなどに着目して選定された銘柄で構成する東証配当フォーカス100指数<.TDV100>。6月23日からの下落率は5.2%安と、日経平均と大して変わらない。日経平均をオーバーパフォームしていた昨年とは様相を異にしている。
「国内企業の多くが前提レートを1ドル=110円に設定するなか、7月下旬には4─6月期の国内企業の決算発表を控えている。通期予想を変えてくるか微妙なところもあるが、円高が業績に及ぼす影響が意識されやすい」(内藤証券・投資調査部長の田部井美彦氏)という。
SMBC日興証券・チーフマーケットエコノミストの丸山義正氏の5日付のレポートによると、16年度平均の為替レートが1ドル=100円となった場合、大企業製造業の経常利益の減益率は短観の11.6%から26.1%に高まる見通しだ。
また同指数の構成銘柄には、三菱UFJ<8306.T>、みずほ<8411.T>、三井住友<8316.T>などメガバンクも入っている。いずれも予想配当利回りは4─5%台と高水準だが、「マイナス金利の影響や欧州の銀行懸念などで買いが入らない」(国内証券)という。NTTドコモ<9437.T>など内需株が上昇しても、指数全体を押し上げる力は弱い。
業績や配当の下振れ懸念が強まるなか、日本株の出遅れ感は鮮明だ。年初来では米ダウ<.DJI>が2.38%高、英FT100種<.FTSE>が4.85%高(いずれも5日時点)なのに対し、日経平均は19.2%安となっている。
三菱UFJ国際投信・チーフストラテジストの石金淳氏は「英国のEU離脱が米国景気に及ぼす影響が軽微と確証が得られれば、ハイテク株などにいったん資金が戻る可能性があるが、まだその段階でもない」と指摘。日本株に対しては割安感が一定の下支え効果をもたらすとみる一方、「ドルが90円台に突入すれば、企業業績は一段と沈むこととなり、日本株はもう一段下をみなければならない」と話している。
(長田善行 編集:石田仁志)