コラム

暗殺犯オズワルドのハンドラーだったとされるCIA工作員が語ったことは? トランプが利用するJFK暗殺陰謀論

2025年02月11日(火)14時25分

1963年11月22日、テキサス州ダラスでケネディは狙撃された BRIDGEMAN IMAGESーREUTERS

<トランプ大統領がケネディ暗殺事件の秘密文書公開を命じた。トランプの言うとおり、これで「全てが明らかになる」のか。筆者は暗殺犯オズワルドのハンドラーだったとされるCIA工作員と会ったことがある>

私は1984年のある日の午後、アメリカの首都ワシントンのカフェでデービッド・フィリップスとテーブルを挟んでいた。63年11月に当時のジョン・F・ケネディ大統領を暗殺したリー・ハーベイ・オズワルドのハンドラーだったと噂されてきた元CIA工作員である。

私の目的は、CIA工作員になるためにフィリップスの口添えを得ることだった。


その日の約30分の会話の後、フィリップスは私を見て、私が彼に渡した紙を戻しながら言った。「なんてこった。君が君自身について書いたことが本当なら、君は水の上を歩くことができるはずだ」

「ノー、サー」と私は答えた。悪戯っぽく、たぶん傲慢に思われるだろう笑みを抑えることができずに。 「でも、どう航海すべきかは知っていますよ」

この面会の10日ほど後の夜に「デービッドの友人のクリフ」と名乗る男性から電話があり、私のCIAでの日々が始まった。

こうして私の希望はかなったわけだが、カフェでの面会で1つだけ失敗を犯した瞬間があった。「あなたがオズワルドのハンドラーだったと読んだことがありますが?」と言ったときのことだ。フィリップスはひとことも発さず、強い視線で私を見つめた。2秒ほどだったと思うが、永遠にも思える時間だった。そこには私の不用意な発言への強い非難が込められていた。

それから41年。オズワルドとフィリップスの名前が再びニュースをにぎわせている。ドナルド・トランプは大統領に復帰して早々の1月23日、ケネディ暗殺事件(そしてロバート・F・ケネディとマーチン・ルーサー・キングの暗殺事件)に関する政府の秘密文書を全て公開するよう命じる大統領令に署名した。「全てが明らかになるだろう」と、トランプは豪語した。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

焦点:25年下半期幕開けで、米国株が直面する6つの

ワールド

日米豪印、4月のカシミール襲撃を非難 パキスタンに

ビジネス

米ゴールドマン、投資銀行部門グローバル会長にマライ

ワールド

気候変動災害時に債務支払い猶予、債権国などが取り組
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 7
    世紀の派手婚も、ベゾスにとっては普通の家庭がスニ…
  • 8
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    あり?なし? 夫の目の前で共演者と...スカーレット…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story