コラム

トランプが命じた「出生地主義の廃止」には、思わぬ悪影響が潜んでいる

2025年01月31日(金)12時28分

移民の犯罪率はアメリカ人より低い

多くのアメリカ人は自国が国境を制御できていないと感じている。2022年だけで約280万人の不法移民がメキシコから流入し、今や人口の14%超を移民が占める。「不法在留外国人」や「滞在資格のない移民」は1100万人を超え、半数近くは英語の理解に苦労している。多くのアメリカ人は不法移民が仕事を奪い、賃金を引き下げ、犯罪を増加させ、税金を払っていないのに社会福祉の恩恵を受けていると非難する。トランプは彼らを「暴力的な犯罪者」「社会のくず」と呼ぶ。

多くのアメリカ人が不法移民を制御することを望んでいるが、トランプの主張や信念に正しいことは一つもない。不法在留外国人の総数1100万人は、この10年間でほぼ変わっていない。彼らは税金を払っており、受給している福祉給付金は非移民のアメリカ人よりはるかに少ない。英語を学び、アメリカ人と同等かそれ以上の教育を受け、犯罪率はアメリカ人より低い。


出生地主義の廃止は、米経済の活力に悪影響を与える。移民はアメリカに、人口増と安価な労働力をもたらしている。不法移民の流入を阻止すれば労働コストの増加やインフレ率の上昇、GDP成長率の低下を招くことになるだろう。人口増加が止まれば社会の高齢化が急速に進むため、年金受給者とそれを支える現役世代の比率が急速に悪化する。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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