コラム

人民が党の真相を知ったら、政府を転覆させるだろう――1979年、胡耀邦元総書記

2016年08月31日(水)18時39分

 そこで『毛沢東 日本軍と共謀した男』の中国語版を出版してくれたニューヨークのMirror Media Groupに連絡して辛氏の連絡先を突き止め、彼との往復書簡が始まったわけだ。

胡耀邦は真実を知っていた

 胡耀邦が演説で言った言葉は、完全に拙著の結論と一致する。

 筆者としては、次のように言いたい。

――もし中国人民の多くが毛沢東の真実を知ったなら、中共政府はたちまち人民の信用と統治の正当性を失い、崩壊するだろう。

 つまり胡耀邦は、毛沢東の真相を知っていたことになる。

 そして彼はその真相を隠ぺいする側につかず、言論の自由と人間の尊厳を重んじようとして失脚し、1989年4月に、会議中に心臓麻痺を起して亡くなった。憤死という言い方もされている。

 同年の6月4日に起きた民主化運動である天安門事件は、彼を死に追いやった保守派権力者側への怒りに燃えた若者たちによって起こされた。

 薄熙来の父親の薄一波も、習近平の父親の習仲勲の無罪を呼び掛けて駆けずり回り、彼らを牢屋から出してあげることに貢献したのも、胡耀邦である。

 自分の父親を助けてくれた胡耀邦が言った言葉「もし人民が、われわれ共産党の歴史の真実を知ったならば、人民は必ず立ち上がり、我々政府を転覆させるだろう!」を、習近平はどのように受け止めているだろうか?

 父親の習仲勲は、日中戦争中、毛沢東とともに延安にいた。ちょうど毛沢東が日本側に中共スパイを送り込んで、日本軍に国民党の軍事情報を高値で売っていたときである。習仲勲もその息子の習近平も、その事実を知らないことはあるまい。

 知っているからこそ、その真相がばれるのを恐れて、対日強硬策を強化し、言論弾圧を高めている。

 日本の世論が、そして国際世論が、一刻も早く、そして少しでも広くこの事実を認識し、力によってではなく、論理によって中国包囲網を形成することを期待する。

 それによって、どれだけ多くの虐げられた中国人民が救われ、人間の尊厳を取り戻すことができることか。

 中国政府は、真相を認めた瞬間に中共政権が崩壊するのを知っているから、真相を認めようとはしないだろうが、しかし正常な日中関係は、その日が来るまで達成されることはないのである。

 今年は毛沢東、没後40周年記念。世界の多くの国が、習近平の毛沢東に対する評価を見ている。

追記)延安時代、毛沢東・共産党軍は、重慶政府の蒋介石・国民党軍と「国共合作」をして、「ともに協力して日本軍と戦おう」としながら、陰では国共合作によって容易に入手できる国民党軍の軍事情報を、日本側に高値で売り、そのお金で共産党軍を強大化させていたのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら

プロフィール

遠藤誉

中国共産党の虚構を暴く近著『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)がアメリカで認められ、ワシントンDCのナショナル・プレス・クラブに招聘され講演を行う。
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米アトランタ連銀総裁、インフレ進展停滞なら利上げに

ワールド

多国間開発銀の改革計画、10月G20会合で議論=ブ

ビジネス

ソニー、米パラマウント買収交渉に参加か アポロと協

ビジネス

ネットフリックス、1─3月加入者が大幅増 売上高見
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story