コラム

「国らしい国を作る」韓国・文在寅大統領に期待高まる

2017年05月18日(木)10時37分

文大統領は盧武鉉大統領の秘書室長を務めた経験がある。そのことから韓国メディアは連日、改革を目指したが失敗に終わった盧武鉉政権の二の舞になるのか、それとも文在寅政権は改革に成功するのか、比較する記事を掲載している。

「文大統領は盧武鉉大統領の失敗を踏まえて保守勢力も抱え込み、保守と進歩に分かれた社会を統合しつつ積弊と呼ばれる腐敗勢力をきれいさっぱり片づけられるのか。改革に成功するのか。それとも盧武鉉大統領がそうだったように、保守勢力に足を引っ張られ急速な変化を望まない進歩勢力からも攻撃され何もできずに終わるのか」といった具合だ。

しかし文大統領の比較対象はなぜ盧武鉉大統領なのか、比較するなら朴槿恵大統領ではないか、李明博大統領、朴槿恵大統領はなかったことにしたいのかと韓国メディアに聞きたいものだ。

それに改革を望む人達は盧武鉉大統領の時代を教訓に生まれ変わった。今はSNSも発展しているので、メディアの言葉を鵜呑みにして誰かを一方的に批判することはしなくなった。ろうそく集会をみればわかるように、社会の悪を見て見ぬふりすることもなくなった。盧武鉉大統領は生前、「主権者は自ら追求する利害関係を反映するためにも政治的選択に能動的に参加しなくてはなりません。目を覚ました市民の団結した力が民主主義の最後の砦であり我々の未来です」と繰り返した。

今回の大統領選挙では、政治に目を覚ました市民がSNSでグループを作り、自分が支持する候補の選挙運動にも積極的に参加し、悪質なフェイクニュースを見つけるとすぐ警察に通報して削除を要請、不法選挙運動や投票場・開票場の監視などにも参加、能動的に政治的選択をしようとがんばった。目を覚ました市民が文大統領の政策を信頼し、後押しすれば、韓国は大きく変わるしかない。冒頭の世論調査でもわかるように、韓国では今のところは文大統領を信頼し期待する人の方が多い。

何はともあれ、文大統領には5年の任期が終わるまで、ずっと国民が応援せずにはいられない大統領でいてほしいものだ。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

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