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原発と「戦争」...福島県飯館村で震災後、102歳の農民が「死」を選んだのはなぜか

2026年3月31日(火)17時20分
印南敦史 (作家、書評家)

「原発、戦争、美しい村」の意味するところ

それでも、じいちゃんは夕飯の時刻になると居間に戻ってきて、定位置の座椅子に腰掛けた。それはいつもと変わらぬ日常だったが、やがて冒頭で触れた静かな、しかし大きな「じいちゃんの決心」へとつながっていってしまう。

じいちゃんが長い人生の最後に選んだ道筋は、はたして間違ったものだと言えるだろうか? もちろん自死が何かを解決するわけではない。けれども、だから「じいちゃんは間違っていた」などと誰に言えるのか。

しかも、じいちゃんの自死には別の理由も影響していたのではないかと著者は推測する。そしてそれを明らかにすべく、じいちゃんの人生をさかのぼっていく。

分かったのは、20歳で徴兵された弟の久がやがて硫黄島に送り込まれ戦死していたことだった。そして、弟がそうした運命をたどったにもかかわらず、兄である自分が幸にして徴兵を逃れられたことに、じいちゃんはずっと負い目を感じていたようだった。

それが、本のサブタイトルにある「原発、戦争、美しい村」の意味するところである。

つまり本書では、東日本大震災と福島原発の事故を発端としながらも、じいちゃんの心の奥底にわだかまっていた思い、夫の病と死を乗り越えようとする美江子さんの苦悩、そして東京電力に対する訴訟と、さまざまな出来事が複合的に絡み合っていくのだ。

だが、一貫して私の頭から離れなかったのは、じいちゃんが最後まで抱えていた村への思いだった。

最も心を打たれたのは、じいちゃんの思いを代弁したとも言える以下の記述である。少し長くなるが、引用しておこう。さまざまなドラマやストーリーが凝縮された本書の中で、この部分には原発事故がもたらす「現実」が投影されている。

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