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ウクライナ戦争

ウクライナ前線で増え続ける兵の自死...隠蔽される「非戦闘による損失」の残酷な真実

THEIR HEAVY DECISION

2026年2月18日(水)14時40分
尾崎孝史 (映像制作者、写真家)

──彼はどのように命を絶ったのか。

その日、私たちは朝に出発して最前線に到着したが、彼はそこにいなかった。彼は上官に『必要な資材を車に積んでから向かう』と伝えていたそうだ。上官は彼の宿営地に向かったが、彼も車も見当たらなかった。しばらくして電話がつながり、彼は私にこう言った。『ビデオモードにして、録画ボタンを押して』。画面を切り替えると、彼が銃を持ち、喉元へ向けているのが見えたんだ。

自殺する直前のクリスマス

自殺する直前のクリスマス。このとき録画した動画はウクライナ軍当局に削除を命じられた



電話越しの切実な悩み

イーゴルは「場所を教えろ! 迎えに行く」と声をかけたが、クリスマスは泣きながら電話を切ってしまったという。その後、送られてきた位置情報を頼りに上官が現場に到着したときのことをイーゴルはこう話した。「彼は車の運転席で、シートベルトを着けた状態で発見された。車内には彼の脳が飛び散っていた。ハンドルのところに〈みんな、ごめん〉とメモを残していた」

事件を察知したウクライナ軍当局は、この日録画した動画を削除するようイーゴルに指示した。軍の評判を下げる情報だと見なされたからだ。いま彼のスマートフォンには、このスクリーンショットだけが残っている。事件の日付も、「(24年の)夏」としか言えないという。

当時、南部ヘルソンの前線で何があったのか。それは現場の兵士たちにインタビューを続けたウクライナメディア「ウクラインスカ・プラウダ」の24年11月の記事、「ドニプロ川左岸への海兵隊上陸の知られざる物語」で明らかになった。

24年に自殺した兵士

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