最新記事
シリア情勢

親族にも秘密でアサド前大統領は国外脱出...「自宅へ帰る」と言って空港へ直行

2024年12月16日(月)15時56分

2人の外交官によると、アサド氏本人は8日に識別信号装置の作動を停止した状態の航空機でダマスカスを去った。同氏は沿岸都市ラタキア近郊にあるロシア軍基地にいったん降り立ち、そこからモスクワに向かった。妻と3人の子どもはモスクワに先着していて、アサド氏を待っていたと、元側近3人と地域の高官1人が明かした。

旧反体制派や市民が撮影してSNSに動画投稿した大統領官邸の状況を見ると、アサド氏が大慌てで脱出した様子がうかがえ、ストーブには調理された料理が残され、家族の写真アルバムなど幾つかの私物が放置されていた。


 

軍事介入得られず

アサド氏は脱出の直前まで、ロシアやそのほかの国に対して政権延命に向けた支援獲得を模索したものの、特に内戦の戦局挽回につながった2015年当時のようなロシアによる軍事介入は当てにできないことがはっきりとした。

例えばシリアで旧反体制派が北部の大都市アレッポに攻撃を仕掛け、電撃的な進軍を開始した翌日の11月28日にモスクワを訪れたアサド氏は、ロシアに軍事介入を求めたが全く聞き入れてもらえなかったと、外交官3人が述べた。

シリア旧反体制派統一組織「シリア国民連合」のハディ・バフラ議長は情報筋の話として、アサド氏は帰国後この厳しい現実を明らかにしなかったと暴露。「彼は軍司令官などにロシアの援軍がやってくると嘘をついていた。彼がロシアから受け取ったのは(援軍の)拒絶だった」と説明した。

アサド氏はモスクワ訪問後の今月2日、イランのアラグチ外相とダマスカスで会談。この時点までに「シャーム解放機構(HTS)」が主導する旧反体制派軍はアレッポを掌握し、アサド政権軍の後退とともに南部へ向けて急速に進撃していた。

あるイランの外交官はロイターに、アサド氏は目に見えるほど途方に暮れ、政権軍が効果的な反撃をするには弱過ぎると認めた、と明かした。

それでも2人のイラン政府高官の話では、アサド氏はイランに軍部隊派遣は要請せず、イランが動けばイスラエルにシリアにいるイラン軍、場合によってはイラン自体への攻撃の口実を与えてしまうという事情に理解を示したという。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる

ワールド

米空母、南シナ海から西進 中東情勢緊迫化

ビジネス

ECB、政策の柔軟性維持すべき 不確実性高い=独連

ワールド

韓国、対米通商交渉で作業部会立ち上げ 戦略立案へ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中