最新記事
荒川河畔の「原住民」⑥

ホームレスたちと河川敷で寿司パーティー、そして「お母さん」と感動の再会をした

2024年10月2日(水)18時25分
文・写真:趙海成
荒川河川敷のホームレス

これが荒川の「お母さん」がキャップで土に編んだ「金ぴかのじゅうたん」

<連載の読者でもある友人から「ホームレスに薬を寄付したい」と言われた在日中国人ジャーナリストの趙海成氏。そこで、河川敷の地面に美しい「絨毯」を編むホームレスの女性にまつわる、まさかの出会いをすることになった。連載ルポ第6話>

※ルポ第5話:50年前にシングルマザーとなった女性は、いま荒川のホームレス。彼女が森でしていたことは? より続く


微信(WeChat)で発表したこの連載の中国版の読者でもある私の親しい友人が、「私も荒川をよくぶらぶら散策しているので、ホームレスたちが食べる物や使う物を渡したいのですが、趙さん、手配してくれませんか」とメッセージを送ってくれた。

私は「いいですよ」と言った。

すると彼は「薬は必要ですか」と尋ねてきた。

私は彼に(どんな薬を持っているかという)薬品のリストがあるのかを聞いた。ほとんどの家庭ではいろいろな薬が多少備蓄されている。この友人の家には備蓄薬が多すぎるので、期限が切れる前にそれらを寄付したいのではないだろうか。

友人は「どんな薬が必要ですか。買いに行くので」と言った。

彼のこの言葉を聞いて、私には分かった。彼は本当にお金を使って寄付したいのだ。

数日後、私はこの友人に返事をした。

「何人かのホームレスに聞いたが、彼らは薬を寄付したい熱心な人がいると聞いて、とても喜んでいた。本当に助かると言ってくれた。ありがとう! ホームレスたちが最も必要としている薬は、風邪薬、胃薬、痛み止め、虫除け、外傷の応急措置に使う薬などです。また、来週の木曜日には2~3人のホームレスと野外で寿司パーティーを開くから、参加しませんか。ついでに薬を持ってきて、直接彼らに渡したらどうでしょうか」

友人は喜んで私の招待を受けた。私たちは会う時間と場所を約束して、一風変わったピクニック晩餐会はこのように決まった。

この、性格がさっぱりしていて、手際がよく、優しさにあふれた弟のような友人は、富彤という名前だ。49歳で、社交ダンスシューズや各種ドレスを卸して販売する会社の社長をしている。

寿司パーティーに現れた、思わぬ人物は「息子」だった

パーティーの日の午後4時半、私と富彤さんは自転車に乗った。彼は薬の入った箱を、私は食品と酒類を背負って赤羽駅を出発し、約10分で荒川の鉄道橋のそばの小さな森に着いた。

森の前の空き地に小さなテーブルといくつかの小さな椅子が置かれているのを見た。明らかに桂さん(仮名)たちは準備ができていて、私たちが来るのを待っていた。

私が桂さんの家の前に来て彼の名前を呼ぶと、桂さんはいつものように笑顔でテントの部屋から出てきた。富社長が薬品を詰め込んだプラスチックの箱を持って桂さんに丁重に渡すと、彼は満面の笑みで口がふさがらないほど喜んだ。

荒川河川敷のホームレス

富社長は薬品を詰めたプラスチック箱を桂さんに丁重に渡した

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

仏伊西、イスラエルのレバノン国連軍攻撃を非難 米も

ワールド

ガザ北部の難民キャンプで数千人が孤立、イスラエルの

ビジネス

米消費支出は引き続き堅調、大手2行幹部が楽観的な見

ワールド

「韓国ドローンが平壌上空でビラ散布」、北朝鮮が主張
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米経済のリアル
特集:米経済のリアル
2024年10月15日号(10/ 8発売)

経済指標は良好だが、猛烈な物価上昇に苦しむ多くのアメリカ国民にその実感はない

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギリス人記者が見た、「メーガン妃問題」とは?
  • 3
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明かす意外な死の真相
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 5
    北朝鮮製ミサイルに手を焼くウクライナ、ロシア領内…
  • 6
    南極「終末の氷河」に崩壊の危機、最大3m超の海面上…
  • 7
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 8
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
  • 9
    【クイズ】ノーベル賞の受賞者が1番多い国は?
  • 10
    ウクライナには「F16が緊急にもっと必要」だが、フラ…
  • 1
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 2
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティアラが織りなす「感傷的な物語」
  • 3
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた「まさかのもの」とは?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」ものはど…
  • 5
    2匹の巨大ヘビが激しく闘う様子を撮影...意外な「決…
  • 6
    借金と少子高齢化と買い控え......「デフレ三重苦」…
  • 7
    ウクライナ軍がミサイル基地にもなる黒海の石油施設…
  • 8
    戦術で勝ち戦略で負ける......「作戦大成功」のイス…
  • 9
    「核兵器を除く世界最強の爆弾」 ハルキウ州での「巨…
  • 10
    「メーガン妃のスタッフいじめ」を最初に報じたイギ…
  • 1
    「LINE交換」 を断りたいときに何と答えますか? 銀座のママが説くスマートな断り方
  • 2
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 3
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 4
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 5
    「もはや手に負えない」「こんなに早く成長するとは.…
  • 6
    漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ…
  • 7
    ウクライナ軍、ドローンに続く「新兵器」と期待する…
  • 8
    北朝鮮、泣き叫ぶ女子高生の悲嘆...残酷すぎる「緩慢…
  • 9
    エコ意識が高過ぎ?...キャサリン妃の「予想外ファッ…
  • 10
    キャサリン妃がこれまでに着用を許された、4つのティ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中