最新記事
中国経済

中国の出稼ぎ労働者「農民工」のスト多発でも、習政権には単なる「頭痛のタネ」程度...その理由は?

China’s Restless Workers

2023年7月5日(水)12時53分
ニール・トンプソン(地政学リスクアナリスト)

中国政府は政治権力の独占を擁護する理由の1つとして、経済を発展させ、市民の生活水準を向上させたと主張している。

しかし、中国の製造業の中心地で広がる出稼ぎ労働者の反乱は、特に新卒者や若者の労働市場が低迷していることと相まって、この主張に疑問を投げかける。

一連の労働問題が習近平(シー・チンピン)国家主席の権力維持に深刻な脅威を与えることはなさそうだ。それでも中国共産党が主導してきた長年にわたる近代化の成果が揺らげば、結果として彼らが主張する正当性が損なわれることを意味する。

歴史的に、学生の抗議行動や労働者の騒動は、共産主義体制内の政治的危機をたびたび引き起こしてきた。その最大の悲劇が1989年の天安門事件だった。

現場レベルで労働争議が続いていることについて、中国政府は国内のソーシャルメディアに掲載されないように対策を強化している。

地方当局にも圧力をかけるかもしれないが、自治体政府などが腕ずくでストライキをやめさせようとすれば、さらなる人権侵害につながりかねない。

共産党としては、2024年に世界経済が回復して、国内の製造業が賃金の引き下げや労働条件の低下を余儀なくされていた状況に終止符が打たれることを期待しているのかもしれない。ただし、中国の製造業や経済全体の成長は、今年後半も不透明のままだ。

IMFの予測によると、中国の成長率は23年の5.2%から24年には4.5%に低下し、25年から28年にかけても低迷が続きそうだ。これは、中国で賃金をめぐる労働争議が続き、中国人労働者にとって製造部門の魅力がさらに低下するという意味でもある。

利益の減少は、中国の経済モデルの見直しと労働者の社会的保護の改善を求める圧力を強めるだろう。

生活水準の向上に伴って若い世代の期待が高まり、ポスト・グローバル化の時代は成長が恒久的に鈍化することを考えると、より良い福祉制度を求める民衆の圧力が中国でも高まるかもしれない。

From thediplomat.com

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

エヌビディアAI半導体、中国向け販売停滞 米国家安

ワールド

メキシコ、官民連携で3000億ドル超のインフラ投資

ワールド

焦点:人民元リスクは上振れ方向、当局が抑制で対応か

ワールド

ブラジル中銀、利下げ開始示唆も引き締め的政策維持を
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗り物から「勝手に退出」する客の映像にSNS批判殺到
  • 3
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れるアメリカ」に向き合う「日本の戦略」とは?
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    トランプ不信から中国に接近した欧州外交の誤算
  • 6
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    最長45日も潜伏か...世界が警戒する「ニパウイルス」…
  • 9
    アジアから消えるアメリカ...中国の威圧に沈黙し、同…
  • 10
    ICE射殺事件で見えたトランプ政権の「ほころび」――ア…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 7
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 8
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 9
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 10
    パキスタン戦闘機「JF17」に輸出交渉が相次ぐ? 200…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中