最新記事

ロシア

プーチンの「核のカバン」を運んでいた元側近もヤられた?物騒過ぎるロシア

Who is Vadim Zimin? Mystery Surrounds Russian Colonel Who Was Found Shot

2022年6月27日(月)17時19分
ブレンダン・コール

アメリカのドナルド・トランプ前大統領の「核のカバン」を運ぶ軍人(2017)  Kevin Lamarque-REUTERS

<自宅で頭部を撃たれていた元幹部、自殺未遂ともいわれるが、プーチンの周辺では不審死が相次いでいる>

このところ、ウラジーミル・プーチン大統領とつながりのある当局者や実業家に関わる謎の事件が次々に起きているが、今度はロシアの元治安機関幹部バディム・ジミン(53)が自宅で撃たれているところを発見された。

ロシアの大衆紙モスコフスキー・コムソモーレツによると、ジミンは20日、モスクワ近郊クラスノゴルスクの自宅で「血の海のなかに」倒れていたという。弟が発見し、ジミンは病院に搬送されたが、昏睡状態に陥っていて、楽観的はできないという。

発見された時点でジミンは頭部に銃弾を受けており、横にはIzh 79-9TMエアピストルが転がっていたと報じられている。

同紙によれば、ジミンは贈収賄疑惑で捜査の対象となっていた。中央関税局の上級職という地位を利用して、政府と締結した契約に関して分け前を要求したという。彼は不正を否定したが、職を解かれ、自宅軟禁となっていた。

同紙によると、銃撃の前日、ジミンの弟は、収賄事件の経過を知るためにダゲスタン共和国からモスクワにやってきたという。

銃撃があった日、弟は、自殺するつもりだと言ったジミンを思いとどまらせた。その後、別の部屋で撃たれているのを発見した。同紙によると、ジミンは仕事と収入を失ったため、落ち込んでいたという。

プーチンの周辺で相次ぐ死

ジミンはロシアの主要な治安機関である連邦保安庁(FSB)で大佐に昇進、プーチン大統領の核ボタンのカバンを運ぶ役目を務めていた。プーチンのそばでカバンを持つジミンの姿が写真に残っている。彼が初めてカバンを運ぶ任務についたのは、エリツィン元大統領の時代だった。

@worldsecretintelligence Russian President Vladimir Putin has lost one of his most trusted people. Former Colonel Vadim Zimin, whom Putin had entrusted with the briefcase containing the nuclear codes, was found with a twisted head in his home. #russia #vladimirputin #news #breakingnews original sound - Zack max

この核のカバンはロシアのコーカサス地方の山にちなんで「チェゲト」名付けられており、実際には核兵器の発射ボタンは入っていないが、発射命令をロシア参謀本部の中央軍司令部に送信することができる。

核のカバンは西側に対する象徴的な脅威だ。今年4月にモスクワの大聖堂で行われた極右政治家ウラジーミル・ジリノフスキーの葬儀にプーチン大統領が出席した際は、軍の警備員が携行していたと伝えられている。

本紙はロシア政府にコンタクトをとったが、同政府はこの事件に関してまだ何もコメントしていない。

プーチンのウクライナ侵攻が始まって以来、ロシアの高官や実業家たちの原因不明の死が相次いで報じられている。

開戦翌日の2月25日には、国営エネルギー大手ガスプロムの幹部アレクサンドル・トゥルヤコフの遺体が発見された。

ロシアのガス大手ノバテックの幹部セルゲイ・プロトセンヤ、元ロシア政府幹部でガスプロムバンク元副社長のウラジスラフ・アバエフも死体で発見された。3月24日には億万長者の実業家バシリー・メルニコフ、5月8日にアレクサンドル・スブボティンの遺体が発見されている。  

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRB、年内は金利据え置きの可能性=ミネアポリス連

ワールド

ロシアとウクライナの化学兵器使用、立証されていない

ワールド

米、イスラエルへの兵器出荷一部差し止め 政治圧力か

ワールド

反ユダヤ主義の高まりを警告、バイデン氏 ホロコース
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 7

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 8

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 9

    ハマス、ガザ休戦案受け入れ イスラエルはラファ攻…

  • 10

    プーチン大統領就任式、EU加盟国の大半が欠席へ …

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中