最新記事

ウクライナ戦争

ウクライナ戦争「どちらが勝利に近いか」を言えない理由

2022年6月6日(月)11時35分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)
ウクライナ軍

戦闘が続く東部セベロドネツクをウクライナの軍車両が移動する(6月2日) SERHII NUZHNENKOーREUTERS

<開戦から100日が過ぎた。軍事アナリストたちの分析により詳細な戦況は明らかになっているが、戦争の全体像は不透明なままだ>

ウクライナ戦争が始まって既に100日余り。戦争がどこへ向かっているかは、混迷を深めるばかりだ。

2月24日にロシア軍が侵攻を開始した当初は、数日もしくは数週間以内にウクライナの首都キーウ(キエフ)が陥落するという見方が一般的だった。この時点で6月になってもまだ戦闘が続き、ウクライナのゼレンスキー大統領が政権にとどまっていると予想した人はいなかった。

軍事アナリストたちの分析により、現時点でどちらの部隊がどの地域を押さえているかという詳細な戦況は明らかになっている。

しかし、アナリストたちも認めているように、戦争の全体像は不透明だ。どちらが勝利に近づいているともはっきり言えない。

その1つの要因は、双方にとっての「勝利」と「敗北」の定義が明確でないことだ。

ゼレンスキーは2月24日より前の境界線が回復されれば、ロシアのプーチン大統領との交渉に応じる用意があると述べている。

ここで言う2月24日より前の境界線の回復とは、ウクライナ領からロシア軍が全て撤退することを意味するのか。その中には、東部のドンバス地方全域も含まれるのか。開戦前に親ロシア派武装勢力が支配していた地域にロシア軍部隊がとどまることは受け入れるのか。また、クリミア半島の扱いはどうなるのか。

一方、プーチンとその周辺は、ゼレンスキー政権を欧米の帝国主義者に操られたネオナチ勢力と非難し、ウクライナが主権国家として存続することに異を唱えている。

この姿勢を崩さなければ、プーチンにとってゼレンスキーとの交渉などあり得ない。

プーチンが考える「勝利」とは、ドンバス地方を占領するだけでなく、実質的にウクライナという国を消滅させることを意味するのだ。

いずれにせよ、双方とも差し当たりは戦闘をやめたいと考える理由がない。ロシアもウクライナも、遠くない将来に決定的勝利を収められるかもしれないと期待している可能性があるからだ。

最近、ロシア軍はウクライナ軍の陣地に対してロケット砲による攻撃を強化している。ウクライナ軍のロケット砲はこれより射程が短く、有効な反撃ができていない。

バイデン米大統領は、ロシア軍のものに匹敵する射程を持つロケット砲をウクライナ軍に提供することを表明した。これにより、戦況が大きく変わる可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米金利は「中立」水準、追加利下げ不要=セントルイス

ワールド

トランプ氏、ウクライナ紛争終結「合意近づく」 ロ特

ワールド

トランプ氏「イランは合意望む」、プーチン氏はイラン

ワールド

国連事務総長、財政危機を警告 7月に運営費枯渇の可
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵士供給に悩むロシアが行う「外道行為」の実態
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 5
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパ…
  • 6
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 7
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 8
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 9
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 10
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 5
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 9
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 10
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中