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中国で放送禁止に 英ドラマ『2034 今そこにある未来』で描かれる、限りなくリアルなディストピア

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2022年1月19日(水)11時00分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

英国では差別的言動を恥じない政治家が支持率を上げ、「IQスコアの低い国民から選挙権を剥脱する法案」の成立を目指す。

世界的金融危機が再来し、銀行の取り付け騒ぎで生活が破綻する人が続出。異常気象が発生し、ウクライナからは大量の難民が押し寄せる。

金融破綻も、異常気象も、難民の流入も今や絵空事ではない。昨年11月末、フランスから英国に渡ろうとした移民が乗ったゴムボートが英仏海峡で沈没し、27人が死亡するという痛ましい事件があった。夏以降、ベラルーシとEU加盟国ポーランドとの国境で身動きできなくなった多くの難民・移民らの姿が連日、テレビで報道されていた。

次々と登場する近未来ガジェットにも目を奪われる。インスタグラムの顔フィルターのように表情をホログラムで表せるマスク、脳とネットを連動させる人工知能を体にはめ込む手術、周囲の人のネット接続をワンクリックで切断できる装置など、想像力を刺激する仕掛けがいっぱいだ。

容赦ないディストピアの未来にも消えないもの

マンチェスターとロンドンに住むライオンズ一家の4世代には、異なる人種、性的志向、性自認、経済格差、政治信条、身体的障害を持つ者もいる。金融破綻や政情の変化によって、一人ひとりの人生が大きく変化していく。

超過激政治家を演じるのは、「ハワーズ・エンド」でアカデミー主演女優賞を受賞し、脚本家として「いつか晴れた日に」ではアカデミー脚色賞を受賞したエマ・トンプソン。ライオンズ家の長男で金融破綻に翻弄されるスティーヴン役には、舞台での経験も豊富で、「007」シリーズのビル・タナー役で知られるロリー・キニア。ウクライナ難民との純愛を貫く次男ダニエルを気鋭の俳優ラッセル・トーヴィーが繊細に演じる。

最終章は限りなくSF的で、シュールだ。

波乱万丈のなか、2034年まで生き延びることができなかった者、天から地に落ちた者もいる。しかし、最後に救いも用意されている。

現実の社会問題や世界情勢の延長線上に、実際に起こり得る恐ろしい未来を描いたこの作品は、未だコロナ禍にいるわたしたちにとって目を逸らしたくなるほどの現実を描いているようにも思える。それでも、最後まで直視すれば、未来からの警告とともに、しみじみとした幸福感を受け取ることができるはずだ。

非情なディストピア世界にあっても、家族の絆は残る。人間の精神は、それほど簡単には死なない。人を愛する気持ちは簡単には消えない。

コロナ渦中のいまこそ、視聴されるべき作品であることは間違いない。

●海外ドラマ『2034 今そこにある未来』(全6話)は、動画配信サービス「スターチャンネルEX」にて独占配信中
【字幕版】配信中 
※第1話 期間限定無料配信中 2月5日(土)まで
【吹替版】3月より全話配信開始
https://ex.star-ch.jp/series/2320

BS10スターチャンネルにて放送
【STAR1 字幕版】1月26日より毎週水曜よる11時〜ほか
※第1話 先行無料放送【STAR1 字幕版】1月23日(日)夕方6時
【STAR3 吹替版】1月25日より毎週火曜よる10時〜ほか
※第1話 初回無料放送【STAR3 吹替版】1月25日(火)よる10時
https://www.star-ch.jp/drama/2034/sid=1/p=t/

(c) Years and Years Limited 2019

●執筆:小林恭子
在英ジャーナリスト。ニューズウィーク日本版ウェブ・コラムニスト。英国、欧州のメディア状況、社会・経済・政治事情を各種媒体に寄稿中。『英国公文書の世界史 一次資料の宝石箱』(中公新書ラクレ)、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)。東洋経済オンライン、現代ビジネス、プレジデント・オンラインなどでも執筆中。





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