最新記事

新兵器

イスラエルが航空機搭載のレーザー兵器でブレイクスルー

Israel Installs High-Powered Laser on Civilian Plane for Intercepting Rockets

2021年6月23日(水)19時25分
ジョン・フェン
イスラエルが開発した航空機搭載のレーザー兵器システム

イスラエルが開発した航空機搭載のレーザー兵器システム Defense Update/YouTube

<防空システム「アイアンドーム」を補完し、戦いを劇的に変革する迎撃システムの実験に成功>

イスラエルは、航空機からドローンを撃墜できる画期的なレーザー兵器の試験に成功した。この新たな兵器は、2021年5月にパレスチナのガザ地区から飛んでくる数千のロケット弾を迎撃した防空システム「アイアンドーム」の穴を補完するものだ。

イスラエル国防省の軍事研究開発部門の責任者ヤニフ・ロテム准将は、民生用のセスナ機に搭載した試作品のレーザー兵器でこの数日間に、地中海上のさまざまな地点でドローンを撃墜したと述べた。

「空からの脅威を迎撃・破壊する能力は画期的なものだ」と、ロテムは記者団に語った。「イスラエルは、こうした能力を真っ先に実用化した国々の1つとなった」

イスラエルの軍事用エレクトロニクスメーカーのエルビット・システムズとイスラエル航空宇宙軍(IAF)が共同開発したこの技術は、ロテムから「技術革新」と称賛され、これにより「さらなる開発のための重要なステップ」が達成されたと、エルサレム・ポストは伝えた。

<「ディフェンス・アップデート」のこの動画によれば、イスラエルのレーザー兵器は気象条件が変化するなかでも的を絞りレーザーを安定化させることに成功した。レーザー兵器は弾薬がいらず、弾を込める時間もいらず、コストが従来兵器に比べるとケタ違いに安い一発当たり3.5ドルで済む。航空機に搭載すれば移動も速いという>

今回の試験では、セスナ機から800メートルほど離れて飛行するドローンを撃墜した。将来的には、射程距離を伸ばしてロケット弾や迫撃砲弾、遠くのドローンも迎撃できるシステムにする計画だ。

熱線で瞬時に発火

このレーザー兵器は、短距離ロケットを標的とする「アイアンドーム」や、弾道ミサイルや敵の航空機、中長距離ロケットを担う広域防空兵器「ダビデのスリング」などと並び、イスラエルの重層的な防空システムの一部になれるだろう。

エルビット・システムズは、航空機に搭載する防空システム「Cミュージック」も製造している。飛来するミサイルの「目をくらませる」レーザー兵器だ。エルビットの幹部、オレン・サバグによると、新たなレーザー兵器はCミュージックに似ているものの、こちらは標的に熱線を送って瞬時に発火させ、破壊する仕組みになっているという。

イスラエル国防省のロテムによれば、同省は今後10年前後で、約20キロの有効射程距離を持つ航空機搭載レーザー兵器の実現を目指している。将来的には、数百キロ先にある標的の破壊を可能にしたいとの構想もある。

ロテムによると、航空機に搭載されるレーザー兵器は、気象条件に左右されない高高度で脅威を迎撃できるうえに、防空範囲も広いという利点がある。

イスラエルは5月、パレスチナ自治区の飛び地であるガザ地区に対して11日間にわたる爆撃を行った。5月21日に停戦が成立したものの、6月16日にはイスラエルがガザ地区に対して空爆を実施するなど、緊張状態は続いている。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック最高値更新、貿易交

ワールド

G7外相、イスラエル・イラン停戦支持 核合意再交渉

ワールド

マスク氏、トランプ氏の歳出法案を再度非難 「新政党

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで約4年ぶり安値、米財政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 8
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 9
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中