最新記事

女性問題

世界の経済政策リーダーに女性続々 コロナ禍克服へ新風

2021年4月10日(土)11時18分

米国のバイデン新政権では多くの女性が経済関連の閣僚や要職に就き、米経済の回復に取り組んでいる。写真は欧州中央銀行(ECB)総裁のクリスティーヌ・ラガルド氏。2020年2月、仏ストラスブールで撮影(2021年 ロイター/Vincent Kessler)

米国のバイデン新政権では多くの女性が経済関連の閣僚や要職に就き、米経済の回復に取り組んでいる。

バイデン政権は財務長官にジャネット・イエレン氏、商務長官にジーナ・レモンド氏、通商代表部(USTR)代表にキャサリン・タイ氏が就任したほか、経済顧問の多くで女性を起用。承認を受けた閣僚級ポストで女性の占める比率が48%近くに達した。

こうした「潮目の変化」は、すでに経済政策に影響しているかもしれない。バイデン政権が先に発表した総額2兆3000億ドル(約252兆4400億円)の「米雇用計画」では、自宅やコミュニティーで子供や高齢者を世話する職を支援するために4000億ドルが充てられた。こうした職種は通常、女性が担う仕事とされ、そのほとんどはこれまで正当に評価されてこなかった。

米雇用計画は過去の経済、通商、労働政策によって作られた人種的、地域的な不平等の是正にも数千億ドル余りの資金を割り当てている。

「経済の構造問題の是正が始まる」

イエレン氏は、「人的なインフラ」に焦点を当てる政策と先の1兆9000億ドル規模の追加経済対策が、女性と、そしてすべての人々に大きな改善をもたらすことは間違いないと言う。女性が全労働力に占める比率はコロナ危機前でさえ過去40年の最低水準に落ち込んでいた。

イエレン氏はツイッターに「最終的にこの法案は80年の歴史を作ることになるかもしれない。過去40年間でわれわれの経済に広がった構造的問題の是正が始まる。これはわれわれにとってスタートに過ぎない」と投稿した。

専門家によると、女性指導者は経済政策に新しい視点を持ち込むことができる。

ハーバード・ビジネス・スクールのレベッカ・ヘンダーソン教授によると、「グループの他のメンバーとは違う人物は、物事を異なる方向から見ることがたびたびある」。そうした人物は「異なる解決策に前向きな傾向を持つ」と同教授は指摘、それこそが今求められていることだという。教授は「われわれは重大な危機に直面している。新しい考え方が必要だ」と話した。

共感と安定性

過去半世紀で大統領か首相に就いた女性は57人だが、経済政策を決める組織は最近までほとんど男性が支配してきた。米国以外では、欧州中央銀行(ECB)総裁にクリスティーヌ・ラガルド氏、国際通貨基金(IMF)専務理事にクリスタリナ・ゲオルギエワ氏、世界貿易機関(WTO)事務局長にヌゴジ・オコンジョイウェアラ氏が就いているが、これらのポストは10年前にはいずれも男性が占めていた。

シンクタンクのOMFIFの年次報告によると、女性が財務相に就いているのは16カ国、女性の中央銀行総裁は14人だ。

入手可能な限られたデータによると、女性の方が危機の際に複雑な組織を運営する上で優れた実績を残している。

ゲオルギエワ氏は1月、IMFなどによる調査結果を引き合いに、「女性が関与している際のエビデンスは非常に明確だ。コミュニティーが改善し、経済は上向き、世界が良くなる」と述べた。

その上で「女性は優れた指導者になる。最も弱い立場にある人々に共感を示し、そうした人々のために物申すからだ。女性は決断力がある。女性は妥協を見いだすことにも、より前向きになることができる」と語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ユーロ相場が安定し経済に悪影響与えないよう望む=E

ビジネス

米製薬メルク、肺疾患治療薬の英ベローナを買収 10

ワールド

トランプ氏のモスクワ爆撃発言報道、ロシア大統領府「

ワールド

ロシアが無人機728機でウクライナ攻撃、米の兵器追
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 4
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワ…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中