最新記事

2020米大統領選

アメリカ大統領選挙、バイデンが勝利 トランプは敗北認めず

2020年11月8日(日)09時40分

エジソン・リサーチや複数の全米テレビネットワークによると、民主党のジョー・バイデン候補が共和党の現職ドナルド・トランプ候補を破り、大統領選を制した。写真は6日、デラウェア州ウィルミントンで演説するバイデン氏(2020年 ロイター/Kevin Lamarque)

大接戦の米大統領選は7日、民主党のジョー・バイデン候補が共和党の現職ドナルド・トランプ候補を破って勝利した。トランプ氏はなお敗北を認めていないものの、全米の主要都市でバイデン氏の支持者が歓喜の声を上げた。

バイデン氏は「米国民が(カマラ・)ハリス副大統領候補と私に寄せてくれた信頼を光栄に思い、謙虚に受け止める。前例のない困難の中、記録的な数の国民が投票をした」とツイッターに投稿。「選挙戦が終わった今、怒りと批判的な物言いは忘れ、1つの国家として団結する時だ。米国が1つになる時だ。癒しの時だ」と書き込んだ。

来年1月の就任時に78歳となるバイデン氏は、過去最高齢で第46代の大統領となる。上院議員を半世紀、オバマ政権では副大統領を務めた。新型コロナの感染拡大が止まらず、経済が減速し、人種差別と警官の暴力に対する抗議が広がる中、分断が深まる米国の舵を取ることになる。


米大手メディアの委託で開票情報をまとめているエジソン・リサーチによると、バイデン前副大統領は激戦州の1つであるペンシルべニア州を制し、新たに20人の選挙人を獲得。これで同氏の獲得総数は273となり、勝利に必要な270人を超えた。さらにネバダ州も取り、279人まで上積みした。トランプ氏の獲得数は214人となっている。

主要メディアがバイデン氏の勝利を伝えた瞬間、ゴルフをしていたトランプ氏は、「偽って勝利したふりをしている」と即座にバイデン氏を非難。「選挙はまだ終わらない」との声明を出した。

3日に投開票された大統領選は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて郵便投票が増加し、激戦州の大勢が判明するまでに時間がかかっていた。

郵便投票には不正があると主張してきたトランプ大統領は、複数の州で訴訟を起こしている。しかし、各州の選挙責任者は、郵便投票に不正の証拠はないとしている。また、法律の専門家は、トランプ氏の試みが成功することはないとしている。

バイデン氏の側近らが滞在するホテルでは、大きな歓声が響き渡った。直接の接触を避けるため、握手の代わりに肘を突き合せたり、抱き合う真似をして喜びを分かち合い、側近の1人は「ずっと待っていたかいがあった」と語った。

民主党の副大統領候補としてともに選挙戦を戦ったハリス上院議員は、バイデン氏に電話する動画をツイッターに投稿。「やったわ、ジョー」と伝えた。ハリス氏は初の女性かつ初の黒人、そして初のアジア系の副大統領となる。

バイデン氏は主に女性、アフリカ系アメリカ人、大卒の白人、都市部の有権者に支えられてきた。

首都ワシントンでは、バルコニーに出て叫んだり、自動車のクラクションを鳴らすなど、市内各地で歓喜の声が聞かれた。ニューヨーク市のブルックリンでは拍手が沸き起こり、バイデン氏勝利の一報に叫ぶ者もいた。

一方、分断した社会を象徴するように、ミシガン、ペンシルべニア、アリゾナの各激戦州では、憤ったトランプ支持者が州政府の庁舎前に集まり、「選挙を盗むな」と抗議した。アリゾナ州の州都フェニックスでは、「トランプ勝利」、「監査が必要だ」、「われわれは法廷で勝つ」などと声を上げた。

バイデン氏勝利の報を受け、英国やフランス、ドイツ、カナダ、スペイン、インド、日本など各国首脳が続々とメッセージを寄せた。

ジョンソン英首相はバイデン、ハリス両氏に祝意を伝えた上で、「米国はわれわれ英国の最も重要な同盟国だ。今後、気候変動問題から貿易や防衛まで、様々な重要課題について緊密に協力できることを楽しみにしている」との声明を発表した。

マクロン仏大統領は「バイデン氏とハリス氏に祝福を送る。今、私たちが直面する難題を克服するには、なすべきことが多くある。ともに協力して取り組んでいこう」とした。

ドイツのメルケル首相は「今の時代が抱える大きな困難に立ち向かううえで、大西洋にまたがる私たちの友好関係(の重要性)は何物にも代えがたい」と述べた。

日本の菅義偉首相は「日米同盟をさらに強固なものとするために、また、インド太平洋地域及び世界の平和、自由及び繁栄を確保するために、ともに取り組んでいくことを楽しみにしております」とツイートした。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



グラフィック アメリカ大統領選挙開票状況


 


【話題の記事】
・【調査報道】中国の「米大統領選」工作活動を暴く
・巨大クルーズ船の密室で横行する性暴力


20240618issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年6月18日号(6月11日発売)は「姿なき侵略者 中国」特集。ニューヨークの中心やカリブ海のリゾート地で影響力工作を拡大する中国の「ステルス侵略」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:メダリストも導入、広がる糖尿病用血糖モニ

ビジネス

アングル:中国で安売り店が躍進、近づく「日本型デフ

ビジネス

NY外為市場=ユーロ/ドル、週間で2カ月ぶり大幅安

ワールド

仏大統領「深刻な局面」と警告、総選挙で極右勝利なら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆発...死者60人以上の攻撃「映像」ウクライナ公開

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 5

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 6

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    「ノーベル文学賞らしい要素」ゼロ...「短編小説の女…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中