最新記事

極超音速ミサイル

中国・ロシアが開発する極超音速機──アメリカは衛星探知網を実現できるか?

2020年1月21日(火)15時15分
秋山文野

ノースロップ・グラマンによる極超音速機衛星探知網「HBTSS」のイメージ Source: Northrop Grumman

<中国、ロシアで開発が進む極超音速機(HGV)に対して、アメリカでは、探知、追跡技術の開発が始まっているがなかなか実現に至っていない......>

中国、ロシアで開発が進む極超音速機や極超音速ミサイル

世界各国でマッハ5を越えて飛行する極超音速機(HGV)や極超音速ミサイル(HCM)の開発が進んでいる。

Science誌がまとめた各国の開発状況によると、中国は、マッハ6で飛行可能な極超音速ミサイル「星空2号(Xingkong-2)」を開発中だ。中国航天科技集団第十一研究院は2018年に飛行試験に成功したと発表しており、現在のミサイル防衛システムを突破できる性能を持つという。また、2019年10月に中国の軍事パレードに登場した「東風17号(Donfeng-17/DF-17)」は、極超音速で滑空する機能を持つ極超音速機(HGV)としての機能を持つミサイルとされている。

HGVそのものの開発だけでなく、分野全体の研究開発が進んでいるのが中国の特徴だ。厦門で開催された2017年の会議では、250を越える論文が発表され、HGVが残すイオン化されたガスやプラズマの噴煙をレーダーで捉える技術など、HGV兵器を検知する技術の開発も進んでいるという。

ロシアは「Kinzhal(キンザール)」とよばれるマッハ10まで到達可能な空中発射ミサイルを公開している。昨年12月には「Avangard(アバンガード)」と呼ばれるHGV機能を持つ弾道ミサイルの試験を実施したと発表し、ロシアの発表ではウラル山脈の基地から発射されたアバンガードは成層圏で母機から分離後にマッハ27に達し、カムチャッカ半島の標的に命中したという。

アメリカでは探知、追跡技術の開発が始まっているが......

アメリカは中露のHGV開発に危機感を抱いている。1940年代後半からHGVの研究開発を進めてはいるものの、中核技術であるスクラムジェットエンジンの開発などに時間を要している。また、現代のHGVの課題である2000度以上の高熱に対する技術はまだ確立されていないという。

一方でアメリカでは、HGVを探知、追跡技術の開発が始まっている。アメリカの現在のミサイル防衛網はICBMを想定し、静止衛星から赤外線センサーでミサイルの熱を探知する機能を持っている。しかしHGVは静止衛星からだと「10~20倍も『見えにくい』」のだという軍の見解があり、しかも地上のレーダーでは捉えられない領域を飛行してくる。

HGVに向けた追跡網を準備する必要があり、そのために小型衛星を活用しようという計画が始まっている。「Hypersonic and Ballistic Tracking Space Sensor:HBTSS(極超音速・弾道追跡宇宙センサー)」または「Space Sensor Layer(スペース・センサー・レイヤー)」と呼ばれる衛星網が2030年を目標に作られようとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米新規失業保険申請、3.3万件減の23.1万件 予

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中