最新記事

中国

また......中国で「長征3号B」ロケットのブースターが民家に落下、被害もたらす

2019年11月28日(木)17時40分
松岡由希子

中国でロケットの墜落による事故が相次いでいる...... Twitter

<中国で再びロケットのブースターが居住地域に落下し、被害をもたらしている......>

近年、中国の宇宙開発活動が活発だ。中国の軌道ロケットの打ち上げ回数は、2018年時点で米国やロシアを抑え、世界最多となった。2019年1月には無人探査機「嫦娥4号」が世界で初めて月の裏側での月面着陸に成功するなど、一定の成果を上げる一方で、ロケットの墜落による事故も相次いでいる。

ブースターが落下、民家を破壊し、有毒な煙が一帯を覆った

中国は、2019年11月23日午前8時55分、四川省の西昌衛星発射センターから衛星打ち上げロケット「長征3号B」を打ち上げた。「長征3号B」は、中国の衛星測位システム「北斗」(BDS)の衛星2機を軌道に送り込むことに成功したが、ブースターが地上に戻る際、近隣の居住地域に落下。民家を破壊し、有毒な煙が一帯を覆った。

中国の宇宙計画を取材しているジャーナリストのアンドリュー・ジョーンズがツイッターに再投稿した中国のSNS「ウェイボー(微博)」の投稿動画では、破壊された民家が炎上し、毒性の高いハイパーゴリック推進剤とみられる黄色い煙が立ちこめ、ブースターの破片とみられる物体もとらえられている。


中国でのロケットの墜落事故は、今回に限ったものではない。1996年2月には西昌衛星発射センターから打ち上げられた「長征3号B」が近隣の村に落下し、壊滅的な被害をもたらした。中国の新華社はこの事故で6名が死亡し、57名が負傷したと報じたが、海外メディアによると死亡者は数百人規模であったとみられている。2018年1月にも、西昌衛星発射センターから打ち上げられた「長征3号B」のブースターが近隣の山中に落下したことが報じられている。


「中国の安全基準は、アメリカの規制当局にとって卒倒ものだ」

米国をはじめ、多くの国々では、地上に戻ってきたロケットの破片などで住民の生活を脅かすことがないよう、ロケット発射場を海岸近くに設置するのが一般的だ。一方、中国では、冷戦時代、安全保障上の目的から、西昌衛星発射センターなど、内陸にロケット発射場を設置してきた。

中国の安全基準の緩慢さを懸念する声もある。アメリカ航空宇宙局(NASA)の元職員でアメリカ連邦航空局(FAA)商業宇宙輸送諮問委員会(COMSTAC)の委員でもあるグレッグ・オートリー氏は、宇宙ニュースメディア「スペース・ニュース」の寄稿記事において「中国で運用されている安全基準は、アメリカの規制当局にとって卒倒ものだ」と綴り、トランプ政権に対して、中国の緩慢な安全基準に対処するよう求めている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

米国株式市場=小幅高、利下げ期待で ネトフリの買収
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中