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中国オフショア人民元戦略:グレーターベイエリアにマカオ証券取引所

2019年10月30日(水)13時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

香港はかつてイギリスが統治していたが、イギリスには「イギリス連邦」(British Commonwealth of Nations=イギリスと旧イギリス植民地から独立した諸国で構成されるゆるやかな連合体。2017年でもなお52か国が加盟)があり、1997年にイギリスが香港を中国に返還するまでのプロセスで多くの国が関与してきた。特にアメリカは1992年に「香港政策法」を制定して、「中国製品に課している関税を香港には適用しない」などの優遇措置を講じてきている。これを逆手にとって、香港の自治を認めないなら、その優遇措置を外すぞと脅しをかけてきたのが「香港人権・民主主義法案」だ。これは今年10月15日に既に米下院で可決され、あとは上院での可決とトランプ大統領のサインを待つだけだ。

この法案が完遂されれば、今後はアメリカが常に「香港の高度の自治が守られているか否かを毎年検証する」ことになる。

中国は要するに、こういった柵(しがらみ)のないマカオへと、香港の役割を徐々に移行させていって、グレーターベイエリア全体で一つの都市圏を形成し、オフショア人民元のマーケットを広げていこうとしているのである。そうすればアメリカの干渉は受けなくて済む。

孫教授の言う通り、たしかにマカオに証券取引所が出来れば、珠江デルタに3か所も証券取引所ができることになり、多くの発展性を秘めていることになる。

珠江デルタの都市圏人口は7,342万人におよび、これを一つの都市として扱えば、世界最大の都市圏になるだろう。

おまけに深センは今や中国のシリコンバレーと言われており、経済的にも技術的にも実力を持ったハイテク企業が密集している。

中国は2014年4月に上海(滬)と香港の証券取引をつなげる「滬港通」を提携させた。だから上海でも香港の株を売買できる。逆に香港でもまた上海の株を売買できる。

これと同じ機能を、2016年12月に香港と深センの間で締結した。

いわゆる「深港通」と称する。

同様のことをマカオとも結び、グレーターベイエリアを一つの都市圏とみなして、「金融大都市」あるいは「大証券取引所」のように位置づけて、香港がダメージを受けてもマカオと深センで一体となって支えていくというメカニズムを創り、かつオフショア人民元マーケットを拡大していくというのが、中国の戦略であることが見えてきた。

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