最新記事

コロンビア

コロンビア大統領選に勝利、ドゥケは半世紀ぶりの和平を危険にさらす?

2018年6月19日(火)18時29分
ロバート・バレンシア

国民の間でいまだに高い人気を誇る一方で、ウリベは大きな政治スキャンダルにも関与してきた。例えばウリベ政権下の大統領府治安局 (DAS)はジャーナリストや司法関係者に対する盗聴を行ったと非難を受け、2010年に解体に追い込まれた。

またウリベは、民間人を犯罪との戦いに参加させる「民主的治安政策」を推進。この政策は一般市民が紛争に巻き込まれる危険を増大させたうえ、2002~2008年の間に軍が「犯罪組織の構成員」の掃討と称して4382人の一般市民を殺害したとされるいわゆる「偽陽性事件 」にもつながったとされる。

一部の人々は、ドゥケの勝利はウリベ政策の復活だと受け止めている。

「ドゥケには選択肢が2つある。ウリベの操り人形になるか、ボスに逆らうか。後者を選ぶとは思えない」と、アイダ・アベジャ上院議員は本誌に語った。アベジャはペトロを支持した政党グループのメンバーだ。「ウリベはコロンビア政治に、戦争と皆殺しというやっかいな歴史を残した。コロンビア人は『偽陽性事件』を忘れない。ウリベ支持者の中にもそう考える人はいる」

それでも一部のアナリストは、ウリベがドゥケを介して院政を敷く可能性もあると考えている。

「ボス」と距離を置くことができるか

「どうなるかは分からない。(現大統領のフアン・マヌエル・)サントスもウリベの子分だったが、(当選後に)たもとを分かった。ドゥケは今のところ独立した個人らしさにも政治的な経験にも欠けるが、権力の座についてからどう化けるかは未知数だ」と、コロンビア大学のクリストファー・サバティーニ講師(国際公共政策)は本誌に語った。

民主中道党の議員の中には、院政の可能性を否定する人もいる。「ドゥケは自分でものを考え、自分の決断ができる気骨ある人物だ」とパロマ・バレンシア上院議員は本誌に語った。「ウリベは政界で私が出会った中でも最も尊敬すべき人物の1人だし、そばで仕事をした4年間、彼から命令されたことは一度もない。ドゥケ政権は、コロンビアにとってウリベがどれほどすばらしい存在だったかを見直すきっかけになるだろう」

同じく民主中道党のマリアデルロサリオ・ゲラ上院議員は本誌に対し、「わが党の創設者はウリベであり、ドゥケがわが党に所属する以上、完全にたもとを分かつとは考えられない。彼は(党の)仲間の主義主張を尊重するだろうし、重要だと思う事項についてはウリベに相談するはずだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:留学生に広がる不安、ビザ取り消しに直面す

ワールド

トランプ政権、予算教書を公表 国防以外で1630億

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、堅調な雇用統計受け下げ幅縮

ワールド

トランプ氏誕生日に軍事パレード、6月14日 陸軍2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 2
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 3
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単に作れる...カギを握る「2時間」の使い方
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    宇宙からしか見えない日食、NASAの観測衛星が撮影に…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 10
    なぜ運動で寿命が延びるのか?...ホルミシスと「タン…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 10
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中