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元CIA諜報員が明かす、ロシアに取り込まれたトランプと日本の命運

2018年5月23日(水)18時30分
ニューズウィーク日本版編集部

東京の日本記者クラブで会見したグレン・カール(5月14日) Newsweek Japan

<ロシアの諜報活動を知り尽くした元CIA諜報員が分析するロシアの浸透力とトランプを取り巻く疑惑の本質、そして日本への影響とは>

2016年11月、ほとんどのメディアの予想を覆す形でアメリカ大統領に当選して以来、ドナルド・トランプはアメリカの内政と外交をこれ以上ないほど揺さぶって来た。公約だったTPP(環太平洋経済連携協定)やイラン核合意からの離脱をあっさり実行する一方、長く膠着状態していた北朝鮮の核・ミサイル問題では、金正恩・朝鮮労働党委員長を歴史的米朝首脳会談の場に引っ張り出そうとしている。

一方、日本ではほとんど忘れられているが、アメリカ国内ではロシア側による大統領選への工作活動や、トランプの側近や家族のロシア側との不適切な接触に関する疑惑「ロシア・ゲート」がまだくすぶっている。今年11月には連邦議会の中間選挙が行われるが、上下院とも過半数を制している共和党がよもや過半数を失うことになれば、政権運営に致命的な影響が出る。選挙の趨勢を決めるカギの1つが、ロバート・ムラー特別検察官によるロシア・ゲート捜査だ。

大統領選の早い段階から、ロシア・ゲートがトランプのアキレス腱だと指摘してきた本誌コラムニストで元CIA諜報員のグレン・カールが5月中旬に来日。東京の日本記者クラブで記者会見を行った。冷戦終結前から旧ソ連・ロシアの諜報活動を知り尽くした彼が分析するロシア諜報機関の浸透力とトランプを取り巻く疑惑の本質、そして日本への影響とは。

***

(以下、会見内容の抜粋)

<今日のゲストはグレン・カールさん、現在はニューズウィーク日本版コラムニストですが、これまではCIAのオペレーション・オフィサーをされていました。本日は、アメリカで大きなニュースとなっているロシア・ゲート、ロシアの大統領選介入疑惑がアメリカの外交や内政に与えている影響などについて冒頭お話しいただいて、質疑に移りたいと思います。CIAの方としては、これまで1979年にウィリアム・コルビーさんが元CIA長官として(日本記者クラブに)お越しいただいたことがあります。あとは情報機関としては、イスラエルのモサドの元長官が記者会見をされています。私は本日の司会の共同通信の杉田(弘毅・編集委員室長)です。それではカールさんよろしくお願いします。>

ご紹介ありがとうございます。私も駆け出しのころ、コルビー長官と会ったことがあります。彼ほど輝かしい経歴は残せませんでしたし、質と言う点では違うかもしれませんが、同じように率直に、腹蔵なく物を語る人間でもあります。またフィクション小説の世界でジョン・ル・カレという作家がいて、彼はステレオタイプ的にCIAなどの諜報機関を退役した人間を描いています。ニューイングランドに住みついて、有機トマトを栽培するが過去からは逃れられない......そういう人間が彼の小説には出てきますが、私がまさにその典型と言えるのかもしれません。ニューイングランドに住んでいますし、トマトの有機栽培もしている。そして、今でもこのようにロシアの諜報活動について語っています。

ル・カレの小説では、退役した諜報機関員は悪い運命にさらされていくのですが、私はそうはならないように願っています。私自身はこの2年ほど、ロシアの諜報機関がアメリカの大統領選に介入し、トランプの取りまきに取り入っていると発言してきました。私は公の場で発言した初めての人間です。なぜ今日、私がここに座っているかと言いますと、この2年あるいは2年半ほどの間、ロシアの情報機関がトランプのビジネス関連の取り巻き、そして家族にも食指を伸ばしてきたことを非常に心配してきたからです。それが1点目。2点目は、ロシアがより広くアメリカ世論、アメリカの選挙への干渉という形でさまざまな諜報活動を展開している、ということです。

アメリカでは、選挙にもトランプにもロシアが関与していた、ということは党派を分かつ問題になっていますが、諜報機関員であればだれでも私と同じような反応をしただろうと確信します。いろいろな情報源からロシアの諜報機関の関与している、という明らかな兆候が見て取れる。私なりの評価、そしてなぜ私がそのような結論にいたったのかについて説明しますと、まずロシアの選挙への介入はここで議論する必要がないほど明明白白です。その多くは共和党ですが、トランプを擁護する人たちはこう言います。「多くの国、多くの諜報機関がアメリカの選挙に介入しようとしているじゃないか、アメリカも同じようなことをやっているのに、なぜことさらそのことを取り上げるのか」と。確かにその通りで、私が見るところ歴史上もっとも成功した例は第二次大戦前にアメリカの参戦を取りつけるための諜報活動をアメリカで展開した大英帝国です。ただ、今回のロシアの介入の度合い、規模、成功度はアメリカに敵対するケースとしては前例がないレベルだと言えます。

2点目ですが、軍の組織か文官の組織かはっきり証明できないですが、ロシアの諜報機関がトランプの陣営に何百回も接触したという証拠が残っています。記録に残されただけで400回以上。名前を知られた情報機関の人間が家族、取り巻き、そしてトランプ自身に接触したのです。

3つ目に、こういったロシアの活動は選挙に影響を与え、実際に効果を上げたということが言えます。1つ証拠もしくは指標として上げられるのは、トランプが選挙戦を展開する前、共和党員の90%以上がロシアを敵国と見なしていたのに、選挙後トランプがロシア支持を言い続け、ロシアに不利な形で政策を変えることを拒否し続けたこともあって、30%から40%の共和党員がロシアに好意的な態度に変わった、ということです。これは史上初めてのことで、唯一の説明として考えられるのは、ロシアの諜報機関の活動の結果そうなった、ということです。

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