あくまで一般論だが、税務署に嫌悪感を抱いている人は少なくないのではないだろうか。
『税務署員うつうつ日記――税務署一筋30年、徴収・窓口・税務調査、激務でうつになりました』(大蔵主税・著、三五館シンシャ/フォレスト出版)の著者も、自身の仕事にそういったイメージがあることは認めている。
世間一般にとっても税務署は“警戒すべき、怖い存在”だろう。テレビドラマや映画に登場する国税査察官(マルサ)のように大勢で踏み込んでくる強権的集団、あるいは窓口で融通の利かない対応に終始する冷徹な役人。税務署員のイメージはたいていそんな姿に集約される。(「まえがき――刑務所嫌い」より)
さまざまな境遇にある人が集まる税務署は、まさに社会の縮図。そこで展開されているのも、人間くさい営みであるという。確かに本書にも、まるでコントかB級ドラマの脇役みたいにクセの強い人が次々と登場する。
例えば、著者も週に2〜3日は立っていたという税務署の総合窓口。そこは苛立ちや怒号が“煮凝りのように”集まる場所らしい(なんとなく納得できる話だ)。
展開されるやりとりは、想像を超えていたりもする。
「ちょっと税金について聞きたいんだけどさ」
やってきたのは、いかにも「休日のパパ」を絵に描いたような中年の男性。くたびれたポロシャツの襟が片方だけ立っている。
「はい、どのようなご用件でしょうか?」
「住宅ローンの返済金って、経費にならないのかね」
私は耳を疑いつつ、念のため確認する。
「恐れ入りますが、お客さまはサラリーマン、つまり給与所得者の方でしょうか?」
「そうだよ。ローンがきつくてね。なんとかできないかと思って」(22ページより)
