最新記事

ハッカー

サイバー攻撃、欧州とアジアの企業は備え薄く甚大な被害も

2017年5月16日(火)08時43分

サイバー保険は通常、データを侵害された人に通知したり、風評被害に対処するため広告代理店を雇ったり、被害者のクレジットカードの利用状況をチェックする手配を整えたりするコストのほか、訴訟費用もカバーする。

サイバー保険は利益率の高いビジネスだ。例を挙げると、保険会社Sciemusは過去に、データ侵害で1000万ドルを補償する保険料は約10万ドルだとしていた。また、物的損害を受けた攻撃を補償する場合の保険料はその7倍だという。

そのほか、独アリアンツ 、米国のAIGやチャブ、スイスのチューリッヒ、ビーズリーやヒスコックスのような英ロイズ加盟の保険会社がサイバー保険を販売している。

高まる需要

欧州では今回の大規模サイバー攻撃以前から、EUがデータ侵害の報告を企業に義務付ける一般データ保護規則を、2018年半ばに適用した後には、保険への需要が高まるとみられていた。

だが、保険会社の競争力が激しく、また今回のサイバー攻撃でどの程度保険が適用されるのかについて不安が残るなか、保険料への影響はあまり聞こえてこない。

保険会社は、規約や適用外に関する言葉選びだけでなく、引き受けるリスクの査定に対し、より慎重になる可能性が高いと、カリニッチ氏は指摘。

「彼ら(保険会社)は、最もリスクに備えている企業を選びたがるだろう」とカリニッチ氏。それ以外の企業も保険加入の資格はあるだろうが、適用外とされる項目が多くなる可能性があるという。

例えば、企業が保険会社に連絡なく身代金を支払った場合、保険会社は適用を認めないことにするかもしれない。

「実に複雑さを極める内容となるかもしれない。数百万ドルを失うことにもなりかねない」とカリニッチ氏は語った。

(Carolyn Cohn記者、Suzanne Barlyn記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

[ロンドン/ニューヨーク 14日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な

ビジネス

米年内利下げ回数は3回未満、インフレ急速に低下せず

ワールド

イラン大統領ヘリ墜落、原因は不明 「米国は関与せず

ビジネス

FRB副議長、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中