最新記事

ハッカー

サイバー攻撃、欧州とアジアの企業は備え薄く甚大な被害も

2017年5月16日(火)08時43分

5月14日、米国以外の多くの企業は、世界各地で発生している大規模サイバー攻撃への備えが欠けており、甚大な損害を被る可能性があると、複数の保険会社が明らかにした。写真は、ノートパソコンを持つフードをかぶった人。ワルシャワで13日撮影(2017年 ロイター/Kacper Pempel)

米国以外の多くの企業は、世界各地で発生している大規模サイバー攻撃への備えが欠けており、甚大な損害を被る可能性があると、複数の保険会社が明らかにした。サイバー保険加入が比較的少ないためだという。

週末に発生した、パソコンを感染させて復旧と引き換えに支払いを要求するランサムウエアによる広範囲な攻撃により、世界各地の自動車工場や病院、店舗や学校などが機能停止に追い込まれた。仕事の始まる週明け15日には、新たな脅威にさらされる恐れもある。

複数のサイバーセキュリティー専門家は、150カ国・地域で20万台以上のコンピューターが被害を受けたWannaCryと呼ばれるウイルス拡散について、その拡散スピードは減速しているものの、そのような小休止もつかの間かもしれないと警鐘を鳴らす。

ロシアを含む欧州やアジアがとりわけぜい弱なため、復旧には何十億ドルものコストがかかる恐れがある。

保険仲介大手エーオンでサイバーリスク担当のグローバル責任者を務めるケビン・カリニッチ氏によると、サイバー保険契約10件のうち約9件は米国内で結ばれているという。市場規模は年間25億─30億ドル(約2830億─3400億円)に上る。

サイバー保険が米国で浸透している最大の理由は、侵害された場合に報告を義務付ける法律が10年前に制定されたからだと、保険仲介マーシュでサイバー保険商品の責任者を務めるボブ・パリシ氏は指摘する。

透明性の高まりにより、報告を義務付けられた損害の補償を受けるため保険に加入するという動機が米企業の間で生まれた。来年半ばに適用が開始される欧州連合(EU)の一般データ保護規則でも同様の効果が見込まれている。

WannaCryに備えていなかった企業が事業中断によって被るコストは、ランサムウエアの身代金の額をはるかに上回る見通しだと、カリニッチ氏は指摘。

「患者の受け入れを断らなければならなくなった病院や、荷物を配達できない世界的な輸送会社、あるいはスペインやロシア、中国の通信会社の事業中断による財務的影響は、身代金300ドルよりはるかに大きい」と同氏は語った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な

ビジネス

米年内利下げ回数は3回未満、インフレ急速に低下せず

ワールド

イラン大統領ヘリ墜落、原因は不明 「米国は関与せず

ビジネス

FRB副議長、インフレ低下持続か「判断は尚早」 慎
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中