最新記事

日本企業

WD、東芝の半導体事業売却差し止めを国際裁判所に申し立て

2017年5月15日(月)07時45分

同社は「支配権の変更に同意がいらなくなるのは、あくまで契約主体である東芝本体が売却される場合であり、今回の子会社売却には適用されない」と指摘。自社の傘下にあるサンディスクの同意なしに東芝が事業を売却するのは契約に反しているとしている。

声明の中でWDのスティーブ・ミリガン最高経営責任者(CEO)は、「仲裁による差し止め申し立ては、我々が最も希望する選択肢ではない」としながらも、「問題解決に向けた他の努力はすべて失敗に終わった。今は法的な手段に訴えることが次に必要なアクションであると信じている」とコメントしている。

東芝は米原発子会社ウエスチングハウスの破綻などによる巨額の損失を穴埋めするため、同事業を2兆円以上で売却したい意向だ。すでに米ファンドのコールバーグ・グラビス・ロバーツ(KKR)が日本の官民ファンドである産業革新機構(INCJ)との共同応札を検討するなど、複数の陣営が関心を示し、売却先の選定交渉が続いている。

ある関係者によると、WDも買収の意向を示しているが、同社の提示額は2兆円を下回っているという。WDに対しては、KKR・INCJ連合に少数株主として参加するよう日本政府が打診しているが、WD側は同事業の支配権を要求しており、交渉は進んでいない、と別の関係者は話す。

国際仲裁裁判所による「仲裁判断」は最終判決に相当する結論で、それに対して上訴することはできない。入札手続き差し止めの命令が下れば、東芝のメモリ事業売却計画が進まず、来年3月末までの債務超過の解消が困難になるだけでなく、上場廃止のリスクが高まる。

さらに、分社化そのものが無効とされれば、東芝メモリの株式を担保に差し入れて主要行からの融資を確保しようという東芝の思惑が外れる事態も予想され、経営再建の先行きに一段と不透明感が増す懸念がある。

(山崎牧子 取材協力: Liana Baker)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ガソリン暫定税率早期廃止目指す、与野党協議を設置=

ワールド

サウジ財政赤字、第2四半期は前期から41%減 原油

ビジネス

S&P中国製造業PMI、7月は49.5に低下 輸出

ビジネス

丸紅、25年4─6月期は8.3%最終増益 食品マー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中