最新記事

THAAD

中国の「用意周到な」THAAD報復 韓国政府、打つ手無し

2017年3月11日(土)08時52分

いかなる対抗手段も、対中輸出の3分の1以上を占める最大の輸出品である半導体やディスプレーに影響を及ぼしかねない。

だが、そのような輸出を制限することによって、最も利益をもたらすセクターの1つをあえてリスクにさらすようないかなる法的手段も、韓国にとって現実的ではないと、NH投資証券のアナリスト、Piao Ren-Jin氏は指摘する。

「韓国政府は懸念を表明し続け、WTOに提訴することはできるが、国家レベルではそこまでだろう」と同氏は語る。最悪のシナリオでは、韓国経済の規模を0.25%低下させる可能性があるという。

代わりに、政府はマーケットの多様化といった対抗手段を講じることを企業にアドバイスしている。

そうした措置を検討している一企業に、Le Belle Cosmeticsがある。中国人観光客が減少したせいで、ソウル中心部にある免税店の売り上げは「急停止」していると、同社のキャシー・リム最高経営責任者(CEO)は話す。

「中国ばかりを見ていられない」と同CEOは述べ、市場拡大の選択肢としてベトナムのような新興市場を強調した。ただその一方で、「同時に、中国に代わるような市場はない」とも明かした。

韓国産業研究院のシニアリサーチフェローであるLee Hang-Koo氏は、中国で直面する困難の影響を最小限にとどめるため、政府が市場の多様化を企業に勧めることは「ばかげており無責任」との見方を示した。

「中国はあまりに大き過ぎる」と同氏は語り、証拠の欠如を考えるとWTOへの提訴は実現困難であり、提訴しても何年もかかる可能性があると指摘。「外交ルートを通じて話し合った方がいい」と述べた。

いかなる提訴も、韓国にとって最大の顧客である中国との関係を悪化させるだけかもしれない。韓国国際貿易協会(KITA)のデータによると、韓国の対中輸出は、今世紀の変わり目には同国の輸出全体の10%程度だったが、昨年は約4分の1を占めた。

韓国のシンクタンク、現代研究所によると、中国の対韓輸出は同期間、4.5%程度で推移している。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ロシア企業、パンダ債の起債進まず 制裁リスクが障壁

ワールド

再送-アデン湾のオランダ貨物船攻撃 フーシ派が犯行

ワールド

米、韓国人労働者に一時的ビザを認める 明確な解決策

ビジネス

5500億ドルの対米投資、為替に影響与えないように
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
特集:2025年の大谷翔平 二刀流の奇跡
2025年10月 7日号(9/30発売)

投手復帰のシーズンもプレーオフに進出。二刀流の復活劇をアメリカはどう見たか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 2
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけではない...領空侵犯した意外な国とその目的は?
  • 3
    【クイズ】身長272cm...人類史上、最も身長の高かった男性は「どこの国」出身?
  • 4
    なぜ腕には脂肪がつきやすい? 専門家が教える、引…
  • 5
    通勤費が高すぎて...「棺桶のような場所」で寝泊まり…
  • 6
    女性兵士、花魁、ふんどし男......中国映画「731」が…
  • 7
    10代女子を襲う「トンデモ性知識」の波...15歳を装っ…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    カーク暗殺の直後から「極左」批判...トランプ政権が…
  • 10
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 1
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び出した父親が見つけた「犯人の正体」にSNS爆笑
  • 2
    日本の小説が世界で爆売れし、英米の文学賞を席巻...「文学界の異変」が起きた本当の理由
  • 3
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外な国だった!
  • 4
    こんな場面は子連れ客に気をつかうべき! 母親が「怒…
  • 5
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 6
    ウクライナにドローンを送り込むのはロシアだけでは…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「がん」になる人の割合が高い国…
  • 8
    コーチとグッチで明暗 Z世代が変える高級ブランド市…
  • 9
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 10
    高校アメフトの試合中に「あまりに悪質なプレー」...…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 8
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中