最新記事

日本経済

消費税率アップ、物価目標達成後が望ましい 米経済学者シムズ教授

2017年1月31日(火)08時49分

1月30日、金融政策の限界論を提唱し、注目されている米プリンストン大のクリストファー・シムズ教授(写真)は都内でロイターの取材に応じ、財政・金融政策の一体運営の重要性を強調し、消費増税は財政再建のために必要であっても、2%の物価目標達成後に実施するのが望ましいと主張した。提供写真。2011年12月撮影(2017年 ロイター/Bertil Ericson/Scanpix)

 金融政策の限界論を提唱し、注目されている米プリンストン大のクリストファー・シムズ教授は30日、都内でロイターの取材に応じ、財政・金融政策の一体運営の重要性を強調し、消費増税は財政再建のために必要であっても、2%の物価目標達成後に実施するのが望ましいと主張した。

 日銀も当面、現在の低金利継続が必要と強調した。今回の来日中に安倍晋三首相と会う可能性は否定しなかったが、現時点で予定はないという。

 シムズ教授は、2011年にノーベル経済学賞を受賞した米経済学者。昨年夏に米ジャクソンホールで、ゼロ金利制約下では金融政策のみでは物価を十分にコントロールできず、財政政策が重要な機能を果たすという趣旨の講演を行い、世界的に注目を集めた。

 同教授は「ゼロ金利制約下では金融政策が機能しないため、財政政策と金融政策が連携するのが望ましい」とし、「2%の物価目標を達成するまで、消費税率引き上げのような財政緊縮策は取るべきでない」と提言した。

 このためアベノミクスは「2014年の消費増税がなければ、もっとうまくいっていた」と述べた。

 20年間続くデフレから脱却するためには「財政政策を物価目標の達成と連関付けるべきだ」とした。「財政拡大とは、単に支出を増やすということではなく、人々に債務の一部は物価上昇で相殺されるとの期待を認識させることだ」と指摘した。

 物価目標達成までに日本がとるべき財政刺激策の具体策については「専門ではない」として明言しなかった。

 ただ、「物価目標との関連から消費税(増税延期)の方が所得減税より説明は難しくないだろう」と指摘した。

PB黒字化より物価目標達成を

 日本政府が2020年度の達成を掲げる基礎的財政収支(PB)の黒字化は「大切だが、2%インフレ目標の達成を優先すべき」と主張。デフレが経済的に悪であるか「理論的に説明するのは難しい」とする一方、「歴史的にデフレが経済成長に望ましくないことは知られている」とし、デフレ脱却の必要性を強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は小反発、FOMC通過で 介入観測浮

ビジネス

国債買入の調整は時間かけて、能動的な政策手段とせず

ワールド

韓国CPI、4月は前年比+2.9%に鈍化 予想下回

ビジネス

為替、購買力平価と市場実勢の大幅乖離に関心=日銀3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中