最新記事

領土問題

南シナ海めぐる仲裁裁判を控え、中国のプロパガンダ攻勢が過熱

2016年7月9日(土)19時28分

7月3日、南シナ海の領有権をめぐりフィリピンが中国を訴えた国際的な仲裁裁判の判断が迫るなか、日本や米国、東南アジアの当局者が神経を尖らせている一方で、中国高官は「気にしていない」と明言する。写真は中国が埋め立て開発を進める南沙諸島のファイアリー・クロス礁。米海軍が2015年5月撮影(2016年 ロイター/U.S.Navy)

 南シナ海の領有権をめぐりフィリピンが中国を訴えた国際的な仲裁裁判の判断が迫るなか、日本や米国、東南アジアの当局者が神経を尖らせている一方で、中国高官は「気にしていない」と明言する。

 南シナ海での領有権を主張する中国と、極めて重要な国際貿易ルートでもある同海域における同国の行動に反発したフィリピンの提訴を受け、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は今月12日、裁定を下す。

 南シナ海の9割に主権が及ぶと中国は主張しており、フィリピンは国連海洋法条約(UNCLOS)に基づき、異議を申し立てている。

「実際いつ裁定が下されるのか、知らないし、関心もない。どのような裁定が下るにせよ、全面的に間違っていると考えるからだ」。中国の劉暁明駐英大使は、ロンドンでの昼食会でロイターに語った。

「(裁定は)中国や、それらの岩礁や島嶼(とうしょ)についての中国の主権に何らの影響を与えるものではない。それは重大で不当な、悪しき前例となるだろう。この件について法廷で争うつもりはないが、自らの主権のために、もちろん戦うことになる」

 仲裁裁判所の裁定を無視しようとする中国政府の方針は、国際法に基づく秩序の拒絶と同時に、米国に対する直接的な挑戦を意味する。米国は、中国が軍事及び民生用目的で同海域の島々と岩礁を開発しており、地域の安定を脅かしていると考えている。

 また、それは領有権紛争リスクをさらに高めることになると、弁護士や外交官、安全保障の専門家らは指摘する。

 裁定結果が下された後で、米政府がどう対処するかによって、この地域における同国の信頼性が試されると広く受け止められている。米国は第2次大戦以降、自己主張を強める中国に対抗して、この地域において圧倒的な安全保障のプレセンスを維持してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

カナダ中銀4年ぶり利下げ、G7で初 追加緩和示唆

ワールド

IAEA理事会、イランに協力強化と査察受け入れ要請

ビジネス

米ボーイング新型宇宙船「スターライナー」打ち上げ 

ビジネス

米ISM非製造業総合指数、5月は53.8 予想上回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品としての信念」(luxury beliefs)とは

  • 3

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新たな毛柄

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    昨年は計209匹を捕獲...18歳未満でも参加可、フロリ…

  • 6

    ロシアが「世界初」の地上型FPVドローンを開発、「竜…

  • 7

    習近平はプーチンの足元を見て、天然ガスを半値で買…

  • 8

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 9

    人民元は米ドルと並ぶ「基軸通貨」となれるのか?

  • 10

    子どもの読解力は家族との会話の中で養われる

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しすぎる...オフィシャル写真初公開

  • 4

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 5

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 6

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 7

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 8

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 9

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 10

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中