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日中関係

日中首脳会談開催に向けて――岸田外相と王毅外相および李克強首相との会談を読み解く

2016年5月2日(月)12時00分
遠藤 誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 会談内容も、李克強首相は「ここ何年か、中日関係は遠回りをしてしまったが、目下の両国関係には改善の兆しが見える。その基礎はまだぜい弱ではあるものの、双方はそれぞれの責任感を以て両国関係を正しい方向に導かなければならない」と、「双方」の努力が必要と強調し、決して「責任は日本側にある」といった高圧的なことは言わなかった。口調も表情も穏やかで、「四つの政治文書の遵守」を求めるに止めている。

「四つの政治文書」とは「1972年の国交正常化」「1978年の日中平和友好条約」「1998年の中日共同声明」および「2008年の戦略的互恵関係に関する共同声明」の四つを指す。2014年11月7日に行われた日中首脳会談で双方が承認し合った。

 岸田外相も、この「四つの政治文書に基づく原則の遵守」には賛同の意を表しており、さらに積極的に環境対策や防災対策など5つの分野で協力を強化していくことを提案した。それに対し、李克強首相も賛同する考えを示している。

 その上で、両者は「大局的な観点から日中関係を改善していくことが重要だ」「世界経済の安定に向け、協力を強化すること」などで認識を共有した。

 ここで重要なのは、李克強首相が最後に「中日首脳会談」の必要性に触れたことだ。

目指すは日中首脳会談

 岸田外相の役割は、要は安倍首相と習近平国家主席による首脳会談の早期実現に向けた外交日程の調整を進めていくことにあったと言っていいだろう。

 実は王毅外相との会談後、李克強首相に会う前に、岸田外相は中南海で楊潔箎国務委員(中共中央政治協委員ではない)と会談している。

 そのときの二人の表情の対比も、とくとご覧いただきたい。彼もまた、「日本に笑顔を見せてはならない」とばかりに、必死だ。

 楊国務委員は「中日関係改善の情勢は、目下、まだぜい弱で複雑だ」「日本が中国と向かい合って行動することを望む」「両国はパートナーシップを重視し、互いに威嚇とならないこと」などとし、その上で「日中首脳会談の早期実現」を目指すことで一致した。

 9月4日と5日に浙江省の杭州市で開かれるG20首脳会議における日中首脳会談や年内に日本で行われるであろう日中韓首脳会談における日中首脳会談などが念頭にあるものと思われる。

 ただ、2015年末の日韓外相会談において慰安婦問題にケリをつけたことが、中国は気に入らなくてたまらない。したがって今では「日中韓」という組み合わせを嫌う。以前は「日中韓」ならば「中韓」が組んで「日本の歴史問題」を糾弾できると喜んでいたが、今は逆転してしまった。北朝鮮の暴走のせいで、韓国のパククネ大統領が、アメリカの言うことを聞くしかなくない所に追い込まれたからだ。いま「日中韓」という組み合わせになれば、「日韓」が組み、中国は歴史問題(特に慰安婦問題)をカードにできなくなる。

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