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米財務省が租税回避行為「インバージョン」抑制で新方針を発表

租税回避のために大量の米国資産を抱えた外国企業に3年間の制限

2016年4月5日(火)11時10分

4月4日、米国の財務省と内国歳入庁は、米企業による外国法人を利用した税逃れ行為「インバージョン」を抑制するための新たな措置を発表した。ルー米財務長官、香港で先月撮影(2016年 ロイター/Bobby Yip)

 米財務省などは4日、税率の低い国へ本社を移転する税逃れ行為「インバージョン」を抑制するための新たな措置を発表した。

 この発表を受け、米製薬大手ファイザーへの身売りで合意したアイルランドの同業アラガンの株価は時間外取引で19%急落した。ファイザーによるアラガン買収は1500億ドル規模で、過去最大のインバージョン関連取引とされる。

 財務省声明によると、最近のインバージョン行為に関し、所有権にかかる要件を回避するために大量の米国資産を抱えた外国企業に3年間の制限を課す。

 インバージョンでは通常、米国企業がより小規模な外国企業を買収した後に本社を買収先に移転。節税目的に納税地を変更するものの、主要な経営陣は米国内にとどまる。

 財務省はまた、米国子会社にかかる関連債務に新たな制限を課すことで、インバージョン後の利益圧縮問題に対処することを表明。利益圧縮は、米国での課税利益を縮小させる幅広い金融取引を指す。

 ルー財務長官は今回の措置がインバージョン行為をさらに押さえつけるだろうとしつつ、議会での立法のみがこうした行為を防ぐことができると指摘した。

 同省は昨年11月、ファイザーのアラガン買収発表を受け、米国企業が第三国に新たな海外本社を設けることや、インバージョン後の所有権制限を順守するために資産を海外本社に「詰め込む」ことをそれぞれ制限するインバージョン規制に乗り出していた。

    

[ワシントン 4日 ロイター]


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Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

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