最新記事

台湾

見限られる馬英九と習近平、米台「国交」回復が始まった

米台両軍の急接近と民進党主席への異例の厚遇──オバマの台湾リバランスに日本も乗り遅れるな

2015年6月19日(金)11時36分
楊海英(本誌コラムニスト)

主役交代 米政府の厚遇を受けた蔡英文民進党主席 Pichi Chuang-REUTERS

「広大な太平洋には米中2大国を収容する、十分なスペースがある」──。

 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は何回もアメリカに語り掛けている。あたかも太平洋には米中2国しかないような厚顔無恥な言い方に、世界はあきれ顔だ。

 なかでも、中華民国台湾は強い危機感を抱いている。孤島を拠点とする弱小政権が、南シナ海と東シナ海の怒濤に埋没しないよう懸命に世界にアピールしている。日米ともフィリピンやベトナムとの関係構築には熱心なようだが、台湾の存在を忘れてはいけない。

 台湾は対岸の中国福建省からのミサイル攻撃の危険にさらされているだけではない。何よりも馬英九(マー・インチウ)総統の対中融和政策が国家そのものを存亡の危機に自ら追い込んでいる。「内部から腐っている」と台湾人が表現する国民党政権は、現状維持よりも「平和的統一」に傾斜している。馬の統帥下で、軍上層部が中国のスパイに情報を漏洩するスキャンダルは後を絶たない。有識者と野党民進党が繰り返し警鐘を鳴らしても反応の鈍い現政権を見限るようなシグナルが最近、アメリカから送られている。台湾軍との直接的な連携強化と、民進党党首の訪米時の対応がそれを物語っている。

遅ればせながらのリバランス

 最初の出来事は4月初めに起こった。米海軍のFA18戦闘攻撃機2機が、台湾南部の台南空港に緊急着陸。沖縄からフィリピン方面へ向かう途中に異常が発生したため、やむを得ぬ措置だった、と米国在台協会は説明する。既に北京当局が南シナ海の南沙諸島で岩礁の埋め立て工事、「砂の万里の長城」の建設に着手していた頃。台湾空軍が管理する軍民共用空港への「不時着」は偶然とは言い難い。

 先月27日にハワイの真珠湾で米太平洋艦隊の司令官交代式が行われた。華やかな式典に台湾の国軍参謀総長の厳徳発(ヤン・トーファー)と海軍総司令官の李喜明(リー・シーミン)が招待された。台湾陸軍航空隊第601旅団と米軍太平洋陸軍第25航空戦闘旅団は「友好旅団」の契りを結び、合同演習の計画を発表した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独アディダス、中国での収賄疑惑の調査開始=FT

ビジネス

ECB、仏国債の臨時購入を検討せず=政策筋

ワールド

イラン、核開発計画に警告したG7声明を非難

ビジネス

米資産運用バンガード、マスク氏報酬案に賛成 テスラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    FRBの利下げ開始は後ずれしない~円安局面は終焉へ~

  • 3

    顔も服も「若かりし頃のマドンナ」そのもの...マドンナの娘ローデス・レオン、驚きのボディコン姿

  • 4

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 5

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 6

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…

  • 7

    水上スキーに巨大サメが繰り返し「体当たり」の恐怖…

  • 8

    なぜ日本語は漢字を捨てなかったのか?...『万葉集』…

  • 9

    サメに脚をかまれた16歳少年の痛々しい傷跡...素手で…

  • 10

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 5

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 6

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 7

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 10

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中