最新記事

エジプト

ナイル川の恵みをめぐる「水戦争」

反政府デモに悩まされるエジプト・モルシ政権のもう一つの「戦争」

2013年7月2日(火)15時09分
ルイザ・ラブラク

奪い合い ダム建設でナイル川の水量が激減する恐れも Amr Dalsh-Reuters

 古代からエジプトに肥沃な土壌をもたらしてきたナイル川をめぐって「水戦争」が勃発している。ナイル川上流に位置するエチオピアは、スーダンとの国境付近に巨大ダムの建設計画を進めている。だが下流のエジプトはこの計画に猛反発し、モルシ大統領が「戦争」は望まないが「あらゆる選択肢の可能性がある」と威嚇する騒ぎに。先週には両国の外相が会談したが、解決のめどは立っていない。

 計画されているのは、6000メガワットの発電能力を持つアフリカ最大の水力発電用ダムで、実現すれば周辺諸国の電力事情を改善できる。

 だが下流のエジプトでは、ナイル川の水量が激減して農業や発電に壊滅的な影響が出るとの懸念が高まっている。人口の急増による食糧不足が深刻化している時期だけに農業生産の減少は死活問題。国土の大半が砂漠で、水資源の95%をナイル川に依存するエジプトにとって、水供給の不安定化は安全保障に直結する問題でもある。

 ただし、実際に軍事衝突が起きる可能性は低いようだ。モルシの強気の発言は、水資源への影響力強化をもくろむ他のナイル流域の国々への警告だとの見方もある。

GlobalPost.com特約

[2013年7月 2日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米中貿易協定、早ければ来週にも署名=ベセント米財務

ビジネス

日産、今期は2750億円の営業赤字を予想 売上高は

ビジネス

ユーロ圏GDP、第3四半期速報+0.2%で予想上回

ビジネス

デジタルユーロ、27年にも試験運用開始の可能性=E
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 5
    コレがなければ「進次郎が首相」?...高市早苗を総理…
  • 6
    【クイズ】開館が近づく「大エジプト博物館」...総工…
  • 7
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中