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反移民ムードのスイスで右派が敗北

ヨーロッパのバランス感覚?下馬評では圧勝するはずだった右派政党に背を向けた有権者

2011年12月6日(火)13時01分
キャサリーン・ライオンズ

予想に反して 得票を伸ばしたのは穏健派の自由緑の党だった(10月23日) Pascal Lauener-Reuters

 スイスの反移民ムードの風向きが変わったようだ。先週の総選挙で、国民は反移民政策を掲げる右派の与党国民党を拒絶し、中道政党に投票した。

 寛大な移民政策が犯罪増加の原因だと訴えて躍進してきた国民党は、前回07年の選挙で得票率28.9%を獲得し、今回は30%に達すると予想されていた。だがふたを開けてみれば、国民党は25.9%と伸び悩み、7議席減。一方、再生可能エネルギーと経済再建を打ち出した穏健派の自由緑の党が9議席増やして12議席を獲得した。

 スイスは人口の22%以上が外国人で、一部には50%以上の町もある。多様な民族が平和に暮らす国だったスイスを移民問題の地雷原に変えたのは国民党だと専門家は指摘する。

「攻撃的な感情が生まれているのは国民党の責任だ」と、ジュネーブ大学のサンドロ・カタチン教授は言う。「移民の話題は慎重に言葉を選ばないと、スイス人は(この問題に関しては)すぐに頭に血が上る」

 選挙直前には国民党のマスコットであるヤギが盗まれ、黒いペンキを塗られて返されるという事件もあった。

GlobalPost.com特約

[2011年11月 9日号掲載]

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