最新記事

北朝鮮

洪水写真捏造は食糧不足の危険信号か

朝鮮中央通信が配信した洪水で膝まで水に漬かって歩く平壌市民の写真は、援助を引き出すための捏造だった

2011年9月2日(金)15時01分
知久敏之(本誌記者)

支援は必要だが 北朝鮮の北部と東部では食糧事情が悪化している Reuters

 冠水した道を膝まで水に漬かって歩く平壌の住民たち──。苦しい食糧事情の北朝鮮を襲う自然災害の実情を伝えるため、北朝鮮の朝鮮中央通信が7月15日に撮影した写真は、実は捏造だった。

 世界各国の報道機関へ配信したAP通信は、「デジタル技術で加工されていた」という理由でこの写真の削除を要請した。写真では明らかに水かさが増されており、洪水被害を強調することで外国からの食糧支援を引き出す狙いがあったと、韓国メディアは分析している。

 確かに北朝鮮の食糧事情は悪化している。EUの人道支援事務局は6月に北朝鮮に調査団を派遣。「北部と東部で食糧事情が悪化し、65万人が深刻な栄養失調の状態にある」として7月、1000万ユーロ相当の食糧支援を決めた。

 その一方で北朝鮮の特権階級による高級嗜好品の輸入は倍増している。中国の関税統計などによると北朝鮮は今年1〜5月、高級洋酒やたばこを昨年同時期の2倍の約1000万ドル輸入。マクドナルドのハンバーガーまで北京から航空便で運ばれた。

 食糧支援をしても、食べ物が一般国民に行き渡らないのでは、何ともやりきれない。

[2011年8月 3日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、不倫口止め疑惑裁判の判事と検事を非難

ビジネス

最近の円安の動き十分注視、政府・日銀は密接に連携=

ビジネス

国際局長に近田金融研究所長、理事昇格の神山氏の後任

ワールド

豪企業景況感指数、4月は長期平均水準まで低下 雇用
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 5

    横から見れば裸...英歌手のメットガラ衣装に「カーテ…

  • 6

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 9

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中