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経済で接近する中台の危険な二重構造

良好な貿易関係とは裏腹に軍事的な緊張は高まる一方。市民レベルでも中国への不信感が募っている

2010年10月18日(月)15時37分
アイザック・ストーン・フィッシュ(北京)

根深い対立 台湾の兵士たち。中国の脅威が高まるなか、台湾は今後も武器の輸入を続ける構えを見せている Nicky Loh-Reuters

 このところ中国が日本に好戦的な姿勢を取っていることに対して、周辺の国や地域は懸念を募らせている。台湾も例外ではない。

 近年は中国との貿易関係が改善し、6月には自由貿易協定に相当する経済協力枠組み協定に調印した。これは中国との経済的な関係を強固なものにする画期的なものだが、一方で軍事的な緊張は以前にも増して高まるばかり。中国の温家宝(ウエン・チアパオ)首相は先頃、台湾に向けて配備している1600基以上のミサイルを撤去するとほのめかしたが、台湾の国防副大臣は中国からの軍事的脅威は高まっていると発言。馬英九(マー・インチウ)総統は先週行った演説で、今後も武器の輸入を続けると発表した。

 独立推進派だった陳水扁(チェン・ショイピエン)政権当時に比べれば、中国との間の緊張は格段に和らいでいる。それでも、中国が最終目標として掲げる「平和的な統一」の可能性はしぼむ一方に見える。

 9月に台湾で発表されたある世論調査では、台湾の完全な独立を支持すると答えた人が全体の16%(00年には12%)に上ったのに対し、中国との再統合を望む人はわずか5%(同9%)に減少。縄張り意識が強く、政治改革を拒む中国に対して台湾の人々は根深い警戒感を抱いている。中国政府は専制的だと考えていると答えた人は54%に上った。

 中国は長年、台湾は国家の領土保全にとって最も重要な「国家の核心的利益」の1つだと主張してきた。「核心的利益」にはチベット、新疆ウイグル両自治区や南シナ海も含まれ、こうした地域の領有権について中国は一切妥協しない構えだ。「中国は台湾にとっても最善の利益を考えている」と台湾を納得させられない限り、平和的統合に向けた状況の改善は望めないだろう。

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